友達

説明会とやらに参加していない私はそんな自己紹介の場があることなど全くしらなかった。


緊張で心臓が大きく脈打つのを感じる。


とにかく自己紹介の内容を考えなくては。


小松「クラス単体で自己紹介をする場は設けないから、特に自分のクラスメイトの話はよく聞いておけよ。それじゃ移動すっぞ。俺についてきてくださーい。」


白髪交じりの丸眼鏡はそう言って廊下へ出る。

各々が慌てたように立ち上がり丸眼鏡に続いて廊下へ出る。


喜雨「あ、あのっ」


霧雨「はいっ」


不意打ちの声掛けに変に畏まった返事を返してしまう。


喜雨「霧雨さんと紅雨さんは自己紹介、考えてきた?」


霧雨「わ、私は挨拶会の存在を知らなかったというか。」


紅雨「私も....あっ。じゃなくて、私はもう考えてあって、えっと、その、考えてあるよ....」


あぁ。きっとまた私のせいだ。

昨日だって私が勝手に上手く話せていると思っていただけだ。今日は折角喜雨さんが話しかけてくれたのにこの体たらくだ。


きっと紅雨さんには見放されているんだ。"こいつとは上手くやれない"って。

当たり前だ。会話が成立しない人間と関われる訳がない。


折角話しかけてもつれない態度を取るのだからきっと喜雨さんも私を見限ったに違いない。


なに。気にすることはない。今までもそうだった。私にとっては数ある事例の内のひとつ。


いつの間にか一列になって進んでいた大群は2階の渡り廊下を歩き担任が講義ホールと呼んだ巨大な建物に辿り着く。

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