ハンドガレット

ス「うう、寒いぃ」

ヘ「もうすっかり冬だな

  雪でも降らなきゃいいけど」

ス「ええ、いいじゃないですか、雪

  へリィさん嫌いなんですか?」

ヘ「うーん、雪自体は好きなんだけど

  去年は換気口が詰まったりして大変だったし」

ス「あ、私たち死んじゃいますね」

ヘ「そうだね、死んじゃうね」

ロ「どんな会話しながらミルクティー啜ってんのよあんたら

  馬鹿じゃないの」

ヘ「どうしたんだロッカ

  珍しいじゃないか、中央街に出て来るなんて」

ロ「住民税払い忘れてたのよ」

ヘ「ああ、忘れてた 私もしなきゃ」

ロ「そっちこそ何してるの、買い出し頼んだ覚えはないわ」

ヘ「スプリにちょっと街の案内でもしておこうかと思って」

ヘ「この地区はただでさえ入り組んでるから

  早く土地勘つけないと不便だろう」

ロ「ああ、なるほど

  それでハンドガレット片手にティータイムしてんのね」

ヘ「おかげさまで一緒に外行くたびに貯金が切り崩されてく

  バイト増やすか」

ロ「あんまり甘やかさないでよ

  晩飯が入らなくなるから」

ス「だって美味しいんだもん、この辺りのお店」

ロ「そこ、口答えしない

  私の料理をしっかり味わってから言え」

ヘ「すっかりオカンと化したな、お前」

ロ「そりゃ、あのキッズを二年もお守りしてたら

  いやでも母親の気分になるわ」

ロ「出て行くときは何千万要求してやろうかしら

  腕の2、3本売ったって足りないくらい搾り取ってやる」

ヘ「はは、あいつなら本当に喜んで売りかねないからな」

ロ「……笑えないわよね、ほんと」

ヘ「……まあな、とんだ運命共同体だ

  私たちの人生全部、地獄に引きずりこみやがる」

ロ「後悔は?」

ヘ「聞くなよ、してるに決まってる」

ロ「そりゃそうだ」

ロ「ついていこうがいかまいが後悔する

  目があった時点で終わりなんてまるで死神だわ」

ヘ「ああ……自分の意志で死の淵に立たされてるのが

  なおのこと憎い」

ヘ「ぶん殴らないと気が済まねえ、あいつ」

ロ「だからこそ」

ヘ「ああ……」

ス「……」

ヘ「まあ、スプリにしてみりゃ私たちも似たようなもんだよな」

ス「……いや、私にとってはへリィさんは命の恩人ですから

  それに、もはや家族みたいなものじゃないですか」

ヘ「……そうか、優しいなお前は」

ス「はい、優しいんですよ、私って

  全部ビンタ一発でチャラにしてあげちゃうくらい」

ヘ「……」

ロ「……そりゃ楽しみだわ、ほんと」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る