息抜きーーA

ス「ロッカ〜、野菜の下ごしらえ終わったよ〜」

ロ「ん、どれどれ……よし大丈夫ね」

ス「次は何? まだまだ手伝えるよ」

ロ「いいよ、これ以上任せるのは申し訳ないし

  訓練で疲れてるでしょうし、引き上げていいわ」

ス「でも、これだけの店を一人で切り盛りするって

  すっごい大変そうだから……」

ロ「その気持ちだけで嬉しいわ

  でも大丈夫よ、見た目ほど客なんか来やしないから」

ロ「はぁ〜、あんたの爪の垢を脳味噌にぶち込みたいわ

  あの薄ら笑い居候野郎に」

ス「シュレさんのことですか」

ロ「そうよ。何考えてんだろう、あいつは。

  イーリですら一応は申し訳なさそうにしてんのに」

ス「あはは……」

 (音)

ヘ「よ、二人して開店準備か?

  お疲れ様」

ス「だ、誰!?」

ロ「あれ、なんでへリィがここにいんのよ?」

ス「へリィさん!?」

ス(そ、そう言われてみるとへリィさんだ

  制服着て髪を結んでたら、もう別人だよ)

ロ「何よ急に、今日は来る日じゃなかったでしょ?」

ヘ「ああ、バイトが事故で中止になってさ

  ちょっとスプリを散歩にでも連れてってやろうかなって」

ロ「え、まだ見回りがうろうろしてるんじゃないの?

  スプリを外に出すのは危ないんじゃ」

ヘ「一昨日まではそういう雰囲気だったけど

  今日ここまで来るまでそれらしき気配はなかった」

ヘ「スプリに私の学校のコートを着せてマスク着けてれば

  多少はごまかせるんじゃないかな」

ロ「うーん、まああんたがそういうなら大丈夫なんだろうね

  スプリもよく頑張ってくれてたし、いいんじゃない?」

ヘ「そういうわけなんだけど、どうかなスプリ?」

ス「是非、行きたいです!

  行きたい、んですけど」

ス「やっぱり外歩くのは怖いっていうか」

ヘ「まあ、そうなるか……」

ス「ああ、でも行きたいなぁ……!」

ロ「よし、わかった!

  それならこうすればいいじゃない」

ロ「スプリ、命令よ

  へリィと買い出しに行きなさい!」

ス「へ……?」

ロ「臆病なのと度胸なしは違うのよ、その辺を鍛えて来なさい!

  チキン3kg、お願いね」

ス「え、えぇ……」

ロ「ほら、行った行った!」


(音)


ス「うわあ、綺麗ですね!

  夕陽と電燈が踊ってるみたいです」

ヘ「やけに詩的な表現だな、まるで絵本作家だ

  私もこの通りは好きだけどさ」

ス「人も多いし店もいっぱいあって、なんだかワクワクします」

ヘ「スプリの家の周りにはこういうのないのか?」

ス「うーん、物々交換が基本で、店を構えたりはしないんですよね

  あとはみんなで寄り合って料理を作ったりするくらいで」

ヘ「へえ、そっちもいつか見てみたいなあ」

ス「そうですね、今度案内しますよ」

ス「それにしても、へリィさんが学生とは思ってもいませんでした」

ヘ「ええ、年齢的には妥当じゃ……ってそっか、環境が違うのか」

ス「そですね、私たちは学校は十歳までですからね

ス「でも、女学生っていうのは知ってますよ

  小さい時に絵本で見てからずっと憧れてましたから」

ヘ「じゃあどうだ? 制服を着て見た感想は」

ス「うーん、サイズがおっきいですね

  へリィさんみたいにかっこよくは着こなせません」

へ「はは、若干気にしてることを言ってくれるな」

ス「いやいや、本当にかっこいいですよ

  髪を結んでるのも凛としてて、いいです」

ヘ「やめてよ、恥ずかしい」

ス「モテモテなんだろうなあ

  かっこいいもん」

ヘ「んー、本当にそんなことないからな」

ヘ「バイトですぐ帰るし、理由なく休むし

  どっちかというと煙たがれてるんじゃないか」

ス「ええー、絶対モテてますって、気づいてないだけですよ!

  って、あれ?」

ヘ「どうした?

  何か面白いものでも見つけたのか?」

ス「あれは何ですか?

  向こうにいる子供が持ってるの」

ヘ「ああ、あれはソフトクリームっていうアイスだな

  最近そこの店が開発した新商品らしい」

ス「アイス!? あれがですか!?

  うちじゃ氷を削ったやつしか見たことないですよ」

ヘ「お、じゃあ食べてみるか?

  私のおごりだ」

ス「いいんですか!?

  やったー! 楽しみです」

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