第14話 火の牧場、完成
妨害はあったが、牧場はメネが魔法を掛け直したお陰で無事に完成した。
火の牧場は、赤茶けた砂地が一面に広がる砂漠のような見た目をしていた。
そこかしこに大きな岩場があり、サボテンが生えている。
岩のように生えている赤い水晶のようなものがきらきらと輝いていて綺麗だ。
砂漠って生き物が住むには辛そうな環境に見えるけど……本当に、エルの育成に最適な環境なのかな。
早速、家から連れて来たレッドを牧場に放した。
レッドは辺りをきょろきょろと見回していたが、牧場の環境が気に入ったようで、すぐにのびのびと動き回り始めた。
「何とか完成して良かったね」
牧場を見つめながらメネが笑う。
僕は腕の中のメロンを抱き直しながら、彼女に尋ねた。
「こんな小さいうちから牧場に放しちゃって大丈夫なのかな?」
赤ちゃんのうちは家で面倒を見てあげた方がいいような気がするけど、どうなんだろう?
大丈夫だよ、とメネは言った。
「牧場には魔力が満ちてるから、エルにとっては育ちやすい環境なんだよ。家に置いとくよりはずっと成長が早いはずだよ」
「そうなんだ」
僕はレッドの背中を見つめた。
たくさん運動して、御飯を一杯食べて、早く大きくなるんだよ。
「風の牧場も今のうちに作っちゃおうか?」
「あ、うん。そうだね」
メネの提案で、僕たちはすぐに風の牧場作りに取りかかることになった。
風の牧場を作るのは、火の牧場のすぐ隣だ。
火の牧場作りの時にやったのと同じように、風の属性石を家から持って来て牧場予定地に埋める。
メネに魔法を掛けてもらって、後は魔法が土地を整えてくれるのを待つだけだ。
これも、一日経てば完成するとのことだった。
「此処もようやく牧場らしくなってきたね」
火の牧場の方を見て、腰に手を当てるメネ。
彼女が視線を向ける先には、砂地の上でころころと転がっているレッドの小さな姿がある。
「これからエルをどんどん増やして、賑やかな牧場にしようね! マスター」
「メネ」
僕はメネにまっすぐ目を向けて、言った。
「僕のことは、マスターじゃなくて樹良って呼んでほしいな」
「キラ?」
「そう。それが僕の名前だから」
僕は微笑んだ。
「僕たちは、主従関係にあるんじゃなくて対等な仲間だって思ってる。だから、名前で呼んでほしいんだ」
これは、僕が初めてマスターと呼ばれた時から思っていたことだ。
僕はメネを使役してるつもりなんて全然ないし、生まれたエルたちとも対等に接していきたいと思っている。
その方が、より仲良くなれると思うから。
僕の言葉に納得してくれたのか、メネは分かったと頷いてくれた。
「それじゃあ、これからはマスターのことはマスターじゃなくてキラって呼ぶね」
「うん、そうしてほしい」
「でも、キラの食事はメネが作るんだからね! それは約束だよ!」
「ありがとう。宜しく頼むよ」
約束、と彼女は人差し指を立ててこちらに差し出してきた。
僕はそれに、同じように立てた人差し指を触れさせて応えた。
二人の距離が以前よりもぐっと縮まったような、そんな気がする一時となった。
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