第10話 牧場と属性石

「はい」

 神果を一粒手に取って、膝の上のレッドに近付ける僕。

 レッドはすんすんと神果の匂いを嗅いだ後、控え目に口を開いてぱくりと神果を食べた。

 もちゃもちゃと神果を食べるレッドの姿に癒されながら、指南書を開く。

 見ているのは、『エルが生まれたら』と書かれているページだ。

 指南書によると、エルは生まれたら牧場で育てるのがセオリーらしい。

 その方がエルの成長も早く、健康に育つのだそうだ。

 牧場か……レッドに合う牧場ってどんなのかな。

 僕は指南書のページをぱらぱらと捲って、レッドドラゴンのことが書かれているページを出した。

 指南書によると、レッドドラゴンは火の力を持つエルで、成長すると五メートルを超える巨大な竜になるらしい。

 火の力を持つエルということは、火の力を秘めた牧場を作ればいいってことだよね。

 どうやって作るんだろう。

 次に開いたのは、牧場の作り方が書かれたページだ。

 牧場の作り方……属性石という特別な魔力を秘めた石を土地に埋め込み、開拓することで属性の力を持った牧場が出来上がる、か……

 属性石ってどんなものなんだろう?

「ねえ、メネ。属性石ってどういうものなの?」

「属性石? アイテムボックスに入ってるよ」

 メネは僕の言葉に答えて、生命の揺り籠の方に飛んでいった。

 アイテムボックスの蓋を開けて、中から水晶の結晶のような石を抱えて戻ってきた。

「これが属性石だよ」

 メネが言うには、属性石は全部で八種類あるらしい。

 火。氷。風。土。雷。水。光。闇。

 エルが持つ属性の数だけ種類があり、作りたい牧場の属性によって使う石が変わるのだそうだ。

 メネが持ってきたのは火の属性石。茜色をした、温かそうな見た目の石だった。

 これを牧場に埋め込めば、火の力を秘めた牧場が作れるってわけか。

 特別な牧場っていうからもっと作るのが難しいものかと思ってたけど、案外簡単にできるものなんだね。

「レッドのために火の牧場を作りたいんだけど、牧場ってすぐに作れるの?」

「すぐには無理かなー。牧場ってね、エルが住みやすいように環境を整える必要があるから、魔法が難しいんだ」

 作る規模などによって多少の差はあるらしいが、牧場を作るには一日くらいかかるとのことだった。

 それでも一日でできちゃうのは凄いと思う。普通、人間の手で作ろうとしたら何ヶ月もかかるものだからね。

「今から作れば、明日にはできる?」

 僕の問いに、メネは頷いた。

「うん、明日にはできると思うよ。作る?」

「お願いしようかな」

 僕は指南書をテーブルに置いて、レッドを抱いて席を立った。

 メネから火の属性石を受け取り、レッドを床に下ろす。

「外に行ってくるからいい子にしてるんだよ」

 僕の言葉が分かるのか、レッドは僕の方を見て鳴いた。

 レッドのために、いい牧場を作ってあげなきゃ。

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