第11話 ラファニエルの懸念

 牧場は畑の隣に作ることにした。

 広さは小さな野球場くらい。レッドが大きくなった時に狭く感じないようにと思って、多めのスペースを確保した。

 土地はたくさんあるし、育てるエルは一匹だけじゃないからね。

 場所と広さを決めたら、牧場予定地の中心へ。

 穴を掘って、属性石を埋める。

 エルが掘り返したりしないように、ちょっと深めに埋めた。

 属性石を埋めたら、メネの魔法の出番だ。

 地面に牧場作成の魔法を掛けてもらう。

 魔法を掛ける時、属性石に魔力が篭るようにすると上手くいきやすいらしい。

 これで、牧場作りの作業は完了。後は掛けた魔法が土地を作り変えてくれるのを待つだけだ。

 どんな風に変わるんだろう? 今から楽しみだ。

「エルの育成は順調のようですね」

 メネと並んで土地を見ていると、背後からラファニエルの声が。

 メネはえへんと胸を張った。

「メネは優秀な助手だから! マスターのお世話だって立派にできるんだよ!」

「心配は杞憂だったようですね」

 ラファニエルはふふっと笑った。

 右手に抱えていたものを、僕へと差し出してくる。

「新しいエルの卵です。立派に育ててあげて下さい」

 新しい卵は、淡い緑色をしていた。レッドが生まれてきた卵とは種類が違うようだ。

 僕はラファニエルから卵を受け取った。

 早速、生命の揺り籠で孵してあげなくちゃ。

 今度はどんなエルが生まれるんだろう。

 卵を見つめていると、ラファニエルの表情が僅かに曇った。

「……気を付けて下さい。樹良さん、メネ」

「……?」

 彼女のただならぬ様子に、僕とメネは顔を見合わせた。

 ラファニエルは背後をちらりと見て、言った。

「世界が、軋んでいます。何か良くないことが起こる前触れかもしれません」

 良くないこと?

 天変地異が起きるとでもいうのだろうか。

 こんな世界だし、空から火の玉が降ってきてもおかしくないなとは思ってるけど。

「どうか、エルたちを守ってあげて下さい。エルたちにとっては、貴方たちが頼りなのですから」

「大丈夫だよラファニエル、メネがエルのことも、マスターのことも守るよ!」

 メネは勇ましいね。こんなに小さくて可愛い外見をしてるのに、僕とは大違いだ。

 でも、僕も男だ。僕はただの人間だけど、やる時はやるってところをちゃんと見せないとね。

 一応これでも、この世界の救世主ってことになってるんだから。

 卵をしっかりと抱き抱え、僕は改めて使命をしっかりとやり遂げる決意を胸に抱いたのだった。

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