死にたがり屋の僕と殺したがり屋の彼女

のの

プロローグ?

彼女は僕の額に銃口を押し付けた。


「いいの?殺しちゃうよ?」


嬉々と語る声にはまだ幼さが残っている。


僕は静かに頷く。


ランプに照らされた光だけが僕らを照らす。


「え、ホントに撃っちゃうよ?」


彼女の持つ銃がガチャっとセットされる。


「つべこべ二の句を紡ぐんだったら早くしてよ」


、 、 、 、 、、、

焦れったくなって僕は文句を言う。


「りょーうかいっ」


ニッコリと笑って少女は引き金を引いた。続いて暗闇の中で乾いた音が響く。



こめかみに銃弾が入って僕はばったりと倒れる。



彼女が上から覗き込む。


「どう?」


「んー、全然ダメだな…。前は気を失えたのに、どんどん耐性がついてきてるみたい」


額に刺さった銃弾をぐっと抜き取って僕はゆっくり起き上がる。



少女…マナは嬉しそうに笑う。


「じゃあまたロトを殺せるね」


キラキラと輝くその瞳には狂気がしっかりと宿っていて僕は小さく溜息をつく。






僕は死ねない。神様から死ねない呪いを受けた。


そして彼女は歪んでいる。愛する者を殺したがるのだ。



だから僕らはギブアンドテイク、ウィンウィンの関係だ。



死にたがり屋の僕と殺したがり屋の彼女。



そう、僕たちは確かに狂っていた。





断言しよう。これから話す物語は全て僕の戯言だ。

どんなに語っても何も変わらないし変えられない。

僕の、いや"僕らの"罪は決して償えない。そんなことは分かっている。



ただ僕のこの愚かな口は語らずにはいられないのだ。


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