手紙
ガムテープをコンビニで買い、買い物から戻って来るとガムテープでグルグル巻きの大屋さんが一人でもがいており、克己くんがいなくなっていた。
しばらく待ってみたが、戻って来なかったので、お父さんに電話した。
事情を聞いたお父さんは何か知っているようで「そうか」と言った後、警察署に連絡するように私に指示した。
それから大屋さんが警察署に連れていかれたり、事情聴取に応じたりと忙しい日を過ごしていた。
お父さんに「何を知っているのか、克己くんはどこにいるのか?」と聞きたいが、忙しそうなお父さんになかなか質問する機会はなかった。
本当はお父さんやお母さんの手伝いやボランティアで福島へ行かなきゃいけなかった。
でも克己くんがいつ帰って来るかわからなかったから。
3月23日、小包が届いた。宛名は、山中克己。
中に入っていたのはコップとタオルと手紙だった。何なの、この混成一体な統一感のない組み合わせは!?と、思いながら手紙を読んでみると「ごめん!日にちを指定しようとしたら荷物にしなきゃいけなかった。中に入れた荷物に意味はないよ。」やっぱりね。
「これを読んでいるのは俺が配達を指定した3月23日だと思う。何でこの日を指定したのか?この日なら全部終っているはずだから。この日なら本当の事が言えるから。まず3月23日が何の日なのか?日向さんが殺される予定の日です。何でそれを知ってるのか?俺が2017年の未来から来たからです。何で本当のことを言わなかったか?まだ犯人が何もしてないから。介入しすぎると犯行の予定が変わって日向さんが守れないから。そして何より信じてもらえないから。偶然タイムスリップで2011年に来て、日向さんに恋をしました。そして日向さんが死ぬ運命を知りました。俺は日向さんを助けようと決めたんです。でも仮説では日向さんが助かるとタイムスリップは出来なくなるかもしれない。でも会えなくなったとしても恋人に生きていて欲しかった。これを読んでいるという事は助かったって事だよね、と同時に未来へ帰って戻って来れないって事でもある。でも後悔してないよ、恋人を助けられたなら」鼻の頭がツンと痛くなる。すぐに克己くんを抱きしめたい。でもそれは続きを読んで不可能だと知った。
「これから二年後、俺が大学に入学してくると思う。そこでお願いしたいのは俺に話しかけないで欲しい。なぜなら未来が変わると過去が変わるから。もし俺がタイムスリップして過去の日向さんを助けなかったらもう一度最悪の過去が繰り返される。もし日向さんが俺の事を覚えていてくれたなら、すべてが終わった俺が大学4年の3月23日になった日に会って欲しい。」
勝手な事を言ってる。
私に「6年間誰とも付き合わずに我慢しろ、自分は一週間我慢するから」っていうつもりらしい。
気が向いたら6年間待ってあげようかな?でも、それまでに誰か好きになっちゃうかもね。
廃墟マンションにラブロマンスを @yokuwakaran
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