思案

正人に「二度とあのマンションには近づかない」と約束し、よく効くというお祓いの神社を紹介された。

正人が帰った後、俺は考えた。

日向さんが幽霊?しかも悪霊?信じられない。さっきまで話してた明るい女の子が悪霊のはずがない。


彼女だけが2011年で止まっている訳ではなく、新聞や少し覗いた日向さんの部屋も2011年タイムスリップしていた。いや違うな、していたのは俺だ。俺が2011年にタイムスリップしていたのだ。わからないのはタイムスリップしたタイミングだ。

最初、503号室に行った時にはタイムスリップしていなかった。その証拠にインターホンが鳴らなかったし。

でも504号室に一旦入って、中を掃除してたら、いつの間にかタイムスリップしてて2011年の日向さんが部屋に来たんだよな。

で、彼女を連れて部屋から出て、504号室へ一回戻った時にはいつの間にかタイムスリップが終わってたんだ。全く意味がわからない。

タイムスリップは504号室にいる間に起きてたって事になるな、完全に開始されるタイミングも終了するタイミングもランダムなんだろうか?だとしたらこの瞬間にだってタイムスリップは開始されるかもしれない。

いや違う、ランダムでタイムスリップが起きているのではない。二回ともタイムスリップが開始されたのは俺があのマンションの504号室に入っている間だ。今こうしている間にタイムスリップが何度も起きているのだとして、それに気付かないほど俺はニブくはない。

タイムスリップはあのマンションの504号室に入っている間の「何かのタイミング」で起きているのだ。ただその「何かのタイミング」がわからない。

「考えてもしょうがないか、わからないものはわからないし」俺はベッドへ寝転がった。


そして俺は思っていた。

「過去にタイムスリップして過去に死んでいた少女を助けられるのだろうか?自分が行く過去は現在に繋がっているのか?未来は変わるのか?」

全てはわからないままであった。


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