第2話 出会った日を迎えるまで 平 雄太
平 雄太(たいらゆうた)は、埼玉の北部に暮らす。
地元の工業高校の3年生。童顔で身長がやや低いのが特徴だ。
地元ではけっこう大きい建築会社に就職も決まり、やることもない正月をコタツで迎えていた。
ぼ~っとしながらテレビで見ていた某駅伝。
その中継の合間に流れたニュースで、彼は目を見開いた。
「はっ?ちょっと…意味わかんないし」
それは、彼の就職が決まっていた会社が犯罪を犯していた事が書かれていた。
《スマホ…スマホ。意味わかんない》
自分のスマートフォンを手に取った彼は、すぐに先ほどのニュースについて調べた。
政治資金の提供、談合、粉飾決済、さらには公共機関から請け負った工事に対する過剰請求など、一気に今までの悪事が明るみに出たようだった。
「ちょっと、これなんだよ?」
独り言を呟つぶやいて、スマホをいじくる彼であったが、それ以上の情報を得ることはできない。
それは、その後事件を知った父や母、学校の先生も同じであった。
そしてそれから1週間後。
彼の元に、「内定取り消し」の書類が届けられていた。
《これ…まじかぁ…》
それは、怒るや悩むといった感情よりも凹へこむといった彼の心情だった。
もちろん、学校の先生や父親は会社と連絡を取ってくれた。
しかし…
「よろしいのですか?このまま入社しても、むしろ彼の経歴を傷つけると思いますが…。わが社がいつまで持つかわかりませんが、それでしたら、4月からの入社を認めさせていただきます」
と、よくわからない方向に進もうとしていた。
それは、そうだろう。
地元で大きいなんて、都内にでれば中小企業。
この事件で倒産することは目に見えていた。
「ありがとう。もういいよ。
最初から考え直すから」
少年は、それしか言えなかった。
それから少年は、新たな就職先を模索するが、すでに時も遅く、目に付くような高校生の就職先などなかった。
もちろん、少年にイマイチ活力が沸かないのも原因のひとつだ。
そんな時である。
都内に勤める少年の父親が1つの話を持ってきた。
「雄太。父さんの知り合いであるデザイン会社に勤めてる奴がいるのだが、まぁ雑用なんだけど、人員が足りないみたいなんだ。やってみるか?」
《東京かぁ…いい機会かも》
「父さん、ありがと。やってみるよ。でも、東京に暮らしていい?給料出たら自活するから」
少年は、ちょっと夢だった都内で一人暮らしを提案する。
「まぁ母さんと相談するが、それもいいだろ。働いてる方がよっぽどいい。ダメなら戻ってこい」
父親はそういってくれた。
ニートになるよりいいって話かもしれないが…。
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