行先はいつも俺の意思じゃない?

Ash

第1話 出会った日

 

才能……

 「才能」と書いてセンスと読む。

 「センスは磨くもの」という言葉がある。

 ならば、才能も磨くものかもしれない。


 でもそれは違う。

 

 才能って言うのは、持って生まれたもの。

 才能という珠を各自が生まれ持つ。

 個々できっと大きさも、輝き方も違うだろう。

 それを磨くのに必要なのがセンス。

 

 ならば、

 初めから最大級の大きさと輝きを持つ珠を

 持ち合わせる者がいたとしたら。


 凡人がいくら磨いてもたどり着けない領域。

 凡人がいくら努力しても超えられない壁。

 

 そんな絶対的な才能が目の前に居たとしたら…




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《なにこれ?なんだろう。でもすごくいい》


文香(ふみか)は、目の前の少年の書いた物に魅了されていた。

全身に鳥肌が立つような感覚だ。


《こんな感覚は、初めて先生の個展を見た時の感覚以来…いやそれ以上かも》


「ねぇ君。これ何の真似をしたの?」


何も知らない彼がこんな物書けるわけがない。

こんな物を書きたくて、今まで必死に努力していた文香。


わかっている。

わかっている。

この少年がは真似とかでなく、ただ、ひらめきを適当に書いただけ。

でも、この少年が何の気なしに書いた物をうまく認められずにいたのだ。


「あぁ?真似?んなわけねぇじゃん。

 それにこんな殴り書きに真似もなにもねぇーし。」


少年は答える。

すると、文香からなんともいえない黒い考えが生まれ始めた。


「ねぇ…じゃさ、これ私にちょうだい?」


文香はやや屈むように上目遣いで少年に言った。





文香は美人だ。

もし、学校などであれば、1,2を争うレベルだろう。

文香は今年で26歳になる。

高校生の少年にとって、そんな文香には同級生にはない色香があるのだ。

実は、少年はあまりに美人すぎて、文香と話すのに緊張さえしていた。

だから、口調も強がってるようなものになっていた。


そんな女性から上目遣いでお願いされれば、少年にそれを断ることなんて、できないわけがない。

すでに少年の瞳は、第二ボタンまで開けたシャツを着ている文香が屈むことで、やや見えそうになっているその胸元に集中してしまう。


《ダメだって。おっぱい見てるのがバレる。でも目がつい…》


少年はそんな考えをしながら、


「別にいいよ。どーぜ持って帰っても捨てるだけだし」


などと、ぶっきらぼうに答えるのだった。


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