第2話 カクヨムで
顔が見えない文字だけの知り合いだが、付き合いが長くなればいろいろと知りたくなってくる。最初の頃、書いていた小説やコメント欄の会話から男だと思っていたマサキは、実は女の子で、俺よりも少し年上みたいだった。
「Youさんは優しい話し方だから、女の子かと思ってたし」
「そうかな?ふふふ」
マサキと会いたいな。ふとそう思った。
同じショッピングモールで同じ日に買い物をする人だ。少しタイミングが合わない文字だけの会話じゃなくて、顔を見て喋ったらどんなだろう。
女の子だから、きっと断られるだろう。いや、この桜を見に来る?って聞いたらどうだろう。いきなり家は無理だな。やっぱりカフェがいいのか……
縁側に座って、庭の桜の木をぼんやり眺めながら、俺はいつしかマサキと会うための作戦を考え始めていた。
爺様が遺したどこの国の物か分からないコインと、爺様が魔法石だと言ったくすんだビー玉を見せてやるから、ショッピングモールでお茶しないか?という俺の誘い文句に、全く躊躇せずにマサキがオッケーを出した。
大丈夫なのか?20代の女性だろう。
上手くいったというのに、逆に心配になってしまう。
だが、そんな俺の心配も知らず、マサキは夜になればサイトに現れ、いつものように屈託なく喋っている。
「なあ、もうすぐ、クリスマスだよな。甥っ子にプレゼント買ってあげたいんだけど、Youさん、一緒に選んでくんない?」
「いいよ。どんなテレビが好きか、聞いといてね」
「わかった!」
さすがに待ち合わせの場所や時間をオープンなサイト上では話せないから、こっそりスマホのアプリのIDを交換して、時にはそっちのほうで長く話してる。
「Youさんと話してると長いから、カク方がはかどらねー―――!」
「それは俺のセリフだよw」
「目印、なににしようか?定番は赤いバラ?」
「それは勘弁」
「カープの帽子」
「目印にならん」
「だよねー」
そして約束の日がきた。
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