「ニュー・オーダー」

※このエピソードは本来、”before the disaster "の2番目のエピソードの予定でした。ご留意下さい。


*   *   *


「私は科学者だからね。オカルティックというか……スピリチュアルな話は信じないんだが……それでも、オイナリサマを喚び出した者としては、信じないわけにはいかなくてね」


 そう前置きして、カコ博士は私たちに語り始めました。

 私の胸元を見つめながら。


*   *   *


 私の胸元にあるのは”けもののお守り”

透明な樹脂のようなそれは、私の気持ちに反応して光り輝き、不思議な力を引き起こした。私達が旅を進められたのは、この不思議な力のおかげだと、今でも思います。


 セルリアン女王を倒した後、オイナリサマもお守りについて、不思議な事を言っていました。


『本当にありがとうございました。『けもののお守り』を持つ方がここに現れるのを感じ、ギンギツネに守護するようお願いしたのです。そのお守りを、見せていただけますか?あなたをここに導いた偉大なけもの様を知りたいのです』


 そう言ってオイナリサマはお守りを神妙に見つめていたけれど、不可解な顔をうかべてお守りを返しました。


『え……?こ、これは……なにも、印が無い?そんなはずは……ずいぶんと傷んではいますが、確かにこれはジャパリパークにあったもののはず……』


 その後、オイナリサマは感謝の証として、鳥居のマークのような印をそれにお刻みましたが、結局今でも、このけもののお守りをくれた”偉大なけもの様”の名前はわからずじまいです。


*   *   *


「オイナリサマとシーサー姉妹、彼女たちは伝説上のけものたち、この島を守る”守護けもの”だ。そして調査の結果、この地にはまだ伝説のけものがいる……出現する可能性があることが分かった」


 そう言って、カコ博士は私に一枚の紙を見せました。学校の歴史の教科書で、だいぶ初めの方に載っていたような写真が4枚写っていました。


「有名だから一度は見たことがあるだろう。奈良県にある高松塚古墳の壁画だ。描かれたのは一千年以上も昔そして、描かれているのは……四神獣。白虎、青龍、玄武、朱雀、4体の伝説上の生き物たち。古代中国から、四方位を守護していると信じられてきた護り神たちだ」


 石壁に書かれたそれらは、ところどころ欠損があるとはいえ、迫力までは失われていませんでした、白虎の鋭い瞳、青龍の真っ赤な舌、玄武の黒々とした鱗、朱雀の鮮やかな羽根は、四神たちがただ者ではないことを表しているようです。


「……そして、このパークを、はるか昔から見守ってきた存在だ」


 ええっ!?というフレンズのみんなの驚きが漏れ出ます。私も、伝説上の神様が……それも、4体もフレンズとしているなんて事を、すぐには飲み込めません。


「それで……どうやったらその、”四神獣”に会えるんですか?」

「それこそが、君にお願いしたい事そのものだ。パークには四神獣と考えられるフレンズの目撃情報が少なからずある。君の新しい使命は、四神獣のアニマルガールと接触し、その守護けものの印を君の”けもののお守り”に刻む事」


 私はそれを聞いて、思わずお守りを確認する。


『このけもののお守りをくれた”偉大なけもの”様の名前を……』


 もしかしたら、その答えが分かるかもしれない。そんな気がしました。


「無論、四神獣たちも簡単に印を与えることは無いだろう。自らの大いなる力を簡単に貸すほど、無頓着だとは思えない……だけど、君のアニマルガールとの絆は、きっとその試練を突破出来ると、私は信じている」


 私は頷く、フレンズのみんなも、それを見て私に微笑みかける。新しい冒険が始まる。そんな予感を胸にいだいて、私は博士の研究室を後にしました。


「……健闘を祈る」


*   *   *


 あの”夢”、その通りにこれからの事が進むのならば……あの恐るべき惨禍を覚悟しなければならないのだとしたら。そのための準備を始めなければならない。

「けもののお守り」、全ての印が集まり、完成に至った時、それが持つエネルギーは莫大なものになっている。その力がなければ、あれを切り抜ける事は叶わない。


そして、それを切り抜けた先に、ヒトとけものが共に生きる、その希望を見出すためにも……





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