意識高い女子とヤンデレの狭間

「じゃあ早速、海せんぱいと海音さんの趣味趣向が本当に合うのかどうか、実際に話してみてよ」


 そうだった。出来上がったロボットに突っ込みどころが多くて忘れていたけど、そもそもの本題は、石北が夢や目標を共有できるパートナーを作ることだった。

 石北は早速、異能ベーションの選考会で発表したサービスについて説明を始めた。


「……そんなわけで、イーサリアムのスマートコントラクトを用いて契約を絶対に履行させるというアイデアなんだけど、どうかな」


「快です。私は私で、かねてよりイーサリアムで何か面白いことが出来ないかと考えていたので、とても興味深いです。私が考えていたのは、スマートコントラクトのプログラムを作成した開発者に対して、何らかの報酬を与えられないかということでした。スマートコントラクトはチューリング完全なプログラミング言語なので、複雑なプログラムも組めますけど、イーサリアムのシステム上の手数料フィーを受け取るのは採掘者マイナーだけでしょう? 私はプログラマーですので、プログラムの開発者にも何か報酬が与えられたら、とずっと考えていたんです」


「それはそれで面白いね。簡単に実現するには、単純にプログラマー自身が、そのコントラクト自体に、実行時にいくらかの手数料を自分に送金する契約を組み込めばいいだけだけど……」


 早速、二人とも何やら意識の高そうな会話で盛り上がり始めた。ひとまず、当初の目的は果たせたようだ。


「よかったですね石北先輩。こんな美少女の理解者ができて」


 そう俺が言った瞬間、急に俺の眼前に刃物が突き付けられた。


「美少女? 由明くんは、私以外が美少女に見えるの? その目、壊れてるよ? そんな目はえぐり出しちゃおうね」


 刃物の主は徹子だった。徹子は俺のことをなぜか溺愛しているせいで、たまに俺が他の女の子を褒めたりすると、嫉妬に狂ってこんな風に攻撃してくることがある。

 徹子は、本当に俺の目をめがけてナイフを繰り出してくる。


「大丈夫、その壊れた目を切除した後は、私が二十四時間由明くんの側について目の代わりをしてあげるから。向こうの方にブスがいるとか、今月始まったドラマの主演女優がブスだとか、色々教えてあげるから」


 ブスの情報しか教えてくれないのか。


「ちょっ、徹子待て! 海音さんの手前お世辞を言っただけで、本当は海音さんのことはブスだと思ってるから!」


 俺がそう言うと、ようやく徹子はナイフを収めてくれた。


「不快です。なんですかこの人は。いきなり私のことをブスだとか」


 その代わり、海音さんが俺のことをナイフのように剣呑な目つきで睨んでくるけど。

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