アーマーホロウ
@1679654i
第1話
*小説は書いたことがありませんのでご了承下さい。
練習用の執筆に成ります。
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20世紀に国防省はロシア最大の軍事組織として国から独立するまでに成長した。
人知を超えた戦闘技術で世界の防衛に努め、国際政治も任されるようになる。
表向きは宗教文化を重んじる、平和の象徴かつ世界最大の軍事組織。
しかし、兵士たちにも極秘で行われていたのは
オカルト的な魔術開発と、異世界の研究、
神の召還実験である。
-
フードを深く被った男は手書きで一つ一つ魔方陣を床に書いていく。
この部屋は
世界で最も厳重とされる
牢獄
”ディズカバン”
の中でも立ち入り禁止に指定されている。
部屋の真ん中で黄色く輝いている石の結晶の周りに魔方陣を男は描き終えた。
両手を合わせるように
念じた瞬間、
部屋の中で突如爆発が起きた。
石は粉々に吹き飛んだ。
魔術研究は人々の住む場所から隔離された
牢獄、
ディズカバン
の中で頻繁に行われていたが、世間は誰も
魔術の存在を
知る者はいない。
男は辺りに散らばった、粉々になった輝く石のかけらを一つ残さず拾い上げていった。
さらに男は強く念じた。
爆発が起きた魔方陣の中から、
うめき声と
黒い霧が徐々に
部屋の中に充満していく。
それを確認した男は
部屋を出て、
急ぎ足で逃亡する。
‐
‐
‐
(‐入り口前:廊下‐)
<看守の皆さんは、囚人たちを独房に戻す準備を始めて下さい。就寝時間は午後9時です。>
廊下で就寝のアナウンスが鳴る。
出口の方向へフードの男が急ぎ足で向かっていくのを、
看守兵の一人は
それを目撃した。
「囚人の寝付けもせず帰宅とはいいご身分だな」
ディズカバンの中では、今の時代にしては珍しく看守の制服は鉄の鎧だった。
フードの男はその言葉に振り返りもせず一目散に入り口から出ていく。
すると看守兵の肩を、黒いコートを着た女性が後ろからそっと叩いた。
ディズカバンの中では”術師”と呼ばれる役職で、いわゆる魔術研究をさせられている者の一人だった。
「ジョン今日も夜勤お疲れ様」
「ああ…アレッサか」
アレッサは苦笑いする。
おおよそ500名の兵士と、術師がここで働いている。
設備はレトロ調で行われている研究はどれも呪術的な事。
「警備頑張ってね。」
術師のアレッサは魔導書をたくさん抱えてジョンに言った。
「はぁ…。ああ」
ジョンがそうため息をつくと、「フフ」とアレッサは微笑んだ。
(‐馬小屋‐)
その時だった。
突然ディズカバンの馬小屋で飼われていた馬たちが、立て続くようにわめきだした。
馬たちは馬小屋の小さな塀の中で、ジャンプするようにして出ようと暴れまわっている。
馬小屋の飼育担当をしていた兵士は、そろそろ餌の時間だったなぁ一時間後にあげるか…、と
読んでいた新聞を騒ぎを無視して読み続けた。
黒い霧はひっそりと馬小屋にまで浸食し始めていたが、
気付いていたのは馬達と、もう”一体”だけだった。
そのもう”一体”は、ディズカバン中に置かれている鏡の中で
大きな目を開かせ黒い霧をしっかりと確認する。
―この世界は闇と繋がった―
その瞬間、その”一体”の瞳は紅く光り始めた。
(‐呪術室‐)
ディズカバンの術師たちは、殆どが帰る準備を始めていた。
実験開発していた魔方陣を途中で描きやめ、呪術室から出ていく。
「もう私に話しかけるのやめて!」
「なんでだよ。いいじゃないか一緒にご飯くらい…ねぇ?」
術師は囚人達を相手にしない分、兵士たちより気が緩んでいて
定時にはいつもこのようなやり取りが行われていた。
「忙しいの!」
女性術師はきっぱりと断言して、ズタズタと入口の方へ向かって行った。
誘っていた男は「はは」と苦笑いした。
(-入り口前:廊下‐)
その時だった。
辺りが光り出した。紅い蛍光色。
突如辺りの壁に浮き出した魔方陣の印。
誰もが所在なく周囲を見回した。
「…ただの防御結界の不具合よ」と誰かが言う。
「ただの魔法結界の異常だ」と誰かが繰り返す。
皆がそこかしこでただの異常だと口にする。誰も危険な物を見つけていない。
不安ではあるが、どこかでそれは杞憂に終わるのだと確信している。
アレッサも同じだった。
術師たちはいつものように入口へ、何気ない顔で帰ろうとした。
だが鏡の中の”一体”はそれを見逃さなかった。
ディズカバンの至る所に鏡は設置されていた。
その鏡の中をつたり、全ての人間の動向を監視していた。
突如、扉を叩く音がした。
入口の鉄扉を同僚の一人が叩いている。
分厚い脱獄防止の鉄扉だ。
「開かないんだ」
アレッサがそばに行くとその男は無理やり笑顔を浮かべていった。
彼女も扉に手を掛けてみる。押す事も出来ない。
封印の陣が扉に刻み込まれていた。
「結界魔法の防術循環の異常ね」
アレッサもまたそこかしげにそのセリフを口にし、男は黙り込んだ。
(‐魔道実験室‐)
だがそう言っている間に魔方陣の実験室ではちょっとしたパニックが引き起こされていた。
空間に出現した30㎝くらいの魔方陣が砂を吹き出し続けていた。
「やだ…っ!」
ヒステリックに騒ぐ術師たち。
「何なんだよ一体…!」
いらだちをそのままにして汚い言葉を吐く警備の兵士達。
どうやら魔方陣はどこかの砂漠と異空間で繋がってしまっているらしい。
研究の続きとして書き記していた魔導書を術師たちは残さずかき集める。
「魔導書が埋もれてしまう…ッ。かき集めて!」
「拾ってるよ!」
「魔道器具もよ!早く!」
ディズカバン中にパニックは広がっていた。
(‐馬小屋‐)
「…静かにしろ!」
鳴りやまない馬の罵声に、さすがにおかしいと気付いたのか「どうしたんだ」と独り言を漏らす飼育兵。
(‐休憩室の一室‐)
ディズカバン中の扉は、出現した魔方陣によって固く閉じられている。
各部屋で閉じ込められた兵士や術師達は皆が「何だ」と口ぐさむ。
「避難時って扉が開くんじゃないの?」
「非常口も全部開くはずよ!」
各部屋の中での一室。そう騒ぐ兵士や術師達。
皆がちょっとしたパニック起こし始めていた。
それを黙って見守る一人の女兵士。
突如部屋の中が暗転した。
きゃあと驚く悲鳴。
うたうたして居られなくなったのか、ドアの目の前にいた女兵士がドアを叩く。
「ねぇ…!誰か…っ」
ダンダンと叩き続けても外の反応は一切ない。
「何だ…何だよ…」
部屋の中の男兵士たちはただ立ち止まって息をのむ。
女性はドアをしばらく叩き続けていたが、さすがに諦めたのか
最後に大きくダンと鳴らした後ドアを叩くのをやめた。
「…誰の反応もない…っ!」
部屋の中の様子を鏡の中の”者”は目を光らせしっかりと観察をしていた。
隅に置かれた小さな手鏡に誰も気に止める者はいない。
(-入り口前:廊下‐)
入り口前で「ただの不具合よ」と言っていたアレッサ達も、さすがに何かおかしな事が起きていることを少しづつ感じ始めていた。
「不具合って言ったよな?ったく…」
同僚の男が言った。
「開きそう…?」
同僚の男は何度試しても入り口の扉はうんともすんとも言わない。
「封印されてる!」
「非常口の扉はどうなの…?」
「同じだった」
すかさずジョンは言った。
(‐魔道実験室‐)
同じ頃、魔方陣の実験室では部屋の高さ半分ほど砂が浸食し始めていた。
部屋に突如現れた魔方陣は止まらずに砂を吹き出し続けている。
女術師は研究室に立て掛けられていた鏡の前にひどく怒った様子で言った。
「砂なんて呼ばないで!召還しないでって言ってるでしょ!?」
術師は鏡の中の”者”に向かってそう叫んでみたが、何も反応はない。
同じ部屋に居た兵士は、ドアを何度も体当たりをして開けようとするも扉はびくともしない。
「ドアが開かない…!早くしないと砂が部屋中に…」
「嘘」
女術師は気付いたように兵士に振り返った。
「排溝もない!」
「開けて!急いで!」
その言葉に兵士の男は心を切り替えるように大きく息を吸い、眉を引き締めた。
「今壊してやる。ああああ!」
兵士は装備していた”大剣”を扉に振り下ろした。
降ろした剣の刃が欠けて飛び散った。
(‐休憩室の一室‐)
部屋は真っ黒のままだった。
あれから何度か扉を叩いてみたが、外の反応は一切ない。
ただ隣の部屋や、近くの部屋も同じ状況であるのは隣の壁からうっすら聞こえる声で把握できた。
部屋にいた兵士や、術師の男たちが「なんだ」と騒ぎ始める。
「早くでなくちゃ!」
「一体…何でこんなことに…。」
「いいから出るんだ。すぐにこっから出よう!」
「落ち着け」
と焦る術師の男達に、兵士の男が言った。
「お前がな!」
一人冷静に状況を見ていた女性兵士は、何か不吉な音が微量に響いているのを感じ取った。
「…黙って!」
隣の部屋…近くの部屋から地鳴りのような音が聞こえてくる。
「ねぇ…?」
「地震?」
誰かがそう言った時だった。
何人もの悲鳴が突如、隣の部屋から響き渡った。
同時に爆発でも起きたのかというくらいの大きな音が鳴り、少しして地下深くに落下したような音がした。
悲鳴も音も同じく下へと消えていった。
まさか…部屋が…、と女術師は悪い予感に息をのんだ。
「・・・やばいわ」
突如部屋の床全面をしきる大きな魔方陣が出現した。
魔方陣の円の線を添うように床がひび割れていく。
一部の床がバキッと欠落した時だった。
「きゃあ!」
「うああああ」
ドオンと部屋の中心から円を描くように床が沈落した。
床は陣に呼び寄せられたどこかの空間に落ち、部屋の真ん中には円状の大穴が出来た。
「…っい…や…」
幸い全員が部屋の片隅に寄掛かるようにして難を逃れていた。
だがスペースの余裕は、円からはみ出した僅かしかない。
――誰もがここから早く出なければと思った時だった。
(-入り口前:廊下‐)
同じころにアレッサの居る入り口付近では、大勢の兵士や術師達が外に出ようと集まってきていた。
全員の力でドアを強引に開けようとするも、封印は強力でびくともしない。
「もう一度」と鎧を着た兵士たちが体当たりをしようとした瞬間だった。
最初に毒蛇が威嚇するような音が聞こえた。それに続いて悲鳴がした。
みんなが一斉に立ち上がった。
廊下の向こうから黒いマントを着た浮遊物が、大鎌を持ち、群れを成してこちらへ向かってきていた。
いや、廊下だけではない。囚人室の中にも黒いマントの浮遊物は開かれた魔方陣から湧き出している。
悲鳴は底頭に伝染した。アレッサは魂が抜けていくような錯覚を感じた。
誰かが叫んだ
「死神だ!」
皆が出口を求め、でたらめな方向へ足を勧めた。開いている扉などどこにも無く、廊下も各壁で細かく分散されている。
死神は見る間に部屋中の人々の首を狩っていった。
「やめて―!やめてぇ!…いやっ…や!」
叫び声、怒り越え、鳴き声、うめき声。
逃げなきゃ。
アレッサはそう思い、振り返り、そして脚がもつれた天地が逆になったような気がした。
立とうとするのだが、脚の感覚が無い。どこに力を入れればいいのかわからない。
第一私の脚はどこだ。
死神だ。
そう異界の魔物、死神。
逃げなきゃ。ここから逃げなきゃ。
口にするアレッサは、しかしもうそれが何を意味してるのかわからない。
死神だ。ふたたび呟きアレッサは転がった。
激しく床に頭を転がし、彼女はその時あっさり死んだ。
死神は開いた魔方陣に繋がる異空間へと帰っていく。
――その日〈ディズカバンの牢獄〉で死んだ五百人以上ものの中では
アレッサは唯一自分の顔を残し、幸福な死に方だった。
――…
(‐休憩室の一室‐)
部屋に大穴が開いた後次々と外から漏れ出していた悲鳴や叫びが今一瞬にして鳴り止んだ。
それから数十分が経った。静かだ。
外が一体どうなっているのかわからない。
だが部屋に出現していた魔方陣は消えた。ドアの封印も弱まってきてる。
ありったけの力で何とかドアからほんのわずかな隙間を、女兵士は開くことに成功した。
本当にわずかで出ることは出来ないが、外の光景は覗くことができた。
「…酷い」
おもわずその光景に声が漏れる。
「俺にも見せてくれ」
兵士の男も隙間を覗き込む。
血に死体。壁中に血飛沫の跡。
転がった死体群全てに首が無い。
首が無くなってしまっている。
兵士の男が青ざめて固まっている隙に部屋中の全員がその隙間を覗き込む。
「逃げなきゃ…こんな所から出ないと!」
誰かがそう叫んだ時だった。「よし、手を貸してくれ」兵士の男が、ドアの隙間に手を掛ける。
全員も同じくドアに手を掛ける。みんなが歯を引き縛った。隙間はドアの5分の1くらいしか開かない。
「…どうやっても開かない…っ死体が引っ掛かってるみたいだ」
「充分よ」
女兵士が言った。
「私なら出られる。外に通達してくるわ」
女兵士は装備していた鎧を脱ぐ。着るものを最低限に残し、ドアに小柄な身を寄せる。
狭い隙間。なんのか身を乗り出す。
中から押し出す兵士。部屋の中の全員がその様子を見守った。
「…っあとちょっと…もっと押して!」
だが鏡の中の”者”はそれを見逃さなかった。
ディズカバン中に設置された鏡。
部屋の中から半分以上身を乗り出している女がいる。すぐに処置を施さなくては。
「早く…!あとちょっと…んっ…」
あと少し押し出せば抜けられる。女兵士がそう思った時だった。
突如雷鳴が鳴るような鈍い音が響いた。
「何の音だ?」
部屋の床全面に魔方陣が出現した。
今度は惜しみなく床全面に。僅かな隙間も残さずに。
壁も天井も全ても法人で覆われている。この部屋一帯が魔方陣になっている。
「早くまずいぞ!また穴が開くぞ!」
「早く出ろ!」
兵士の男がドアに挟まれた女兵士を無理やり押し出す。
だが、無理矢理で体が突っかかってしまった。無理に押し出せばいいものじゃない。
「動けないのよーっ!」
逃げなきゃ、と誰かがせかすように言う。
突如部屋の中で風が吹き出した。
出現した魔方陣に穴が開き始め、そこに空気が引きずり込まれている。
まるで重力のように。その力で扉も閉じるように引っぱられていく。
「きゃああああ!」
ドアに挟まれてる痛みで女兵士は悲鳴を上げた。
風は同時にピタリとやんだ。
何故かわからないが穴も無くなっている。
「はぁ…はぁ…オーマイゴット…」
何なのかわからないが挟まれる痛みは無くなった。
今しか無いと兵士の男が彼女を押し出す。
「彼女を出すぞ!」
「待って!やっぱり戻りたい!」
女兵士が慌てふためくように言う。
「中に戻ったら死ぬだけだぞ!」
「良いから引いて!助けてお願い…」
今度は部屋の外の廊下に大穴が出現していた。その中から死神が現れ近づいてくる。
外に顔を出していた彼女だけがそれを目撃した。
死神は扉に近づくと物凄い握力で外から扉を閉める。
女兵士は扉で寸断された後部屋は奈落へと落ちていった。。
―第一章 虚無の病院―
目が覚めた。
目を魔開きそこに見えたもの。コンクリートの白い壁、白いタイル。
そして白いロッカー。ここは更衣室だ。
床の中に寝ていた。
「…はぁ…はぁ…」
何か悪い夢を見ていたような気がする。
更衣室で目が覚めた?ロッカーは開きっぱなし。
そして私は何も身に憑けていなかった。全裸で、床の中心で目が覚めた。
ゆっくりとその状況を考える。一体これはどういうことなの?
体は冷えてないが、少し意識が朦朧としてる。
生まれたての小鹿のように立ち上がった。
更衣室は広い。とても広い。
掛けてあった鏡を見る。胸がある。
女だ。私は女だ。若い女。
これが私の顔。私の身体。
触って確かめる。胸には切ったような切り傷があった。
思い出した。確か着替えてた時にロッカーから突然”何か”に覗き込まれて…。
何かも覚えていない。ただ、それで倒れた…?
そもそも私は誰だ?今がいつで今まで何をしていたのか。
頭の中をいくら探っても回答はどこにもない。
…不安だった。
裸でいる事も不安が募る。置かれてあったガウンをまとってみる。
目まぐるしく様々な事を考えながら更衣室を出る。
そこは病院だった。
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