畑と厨
「懇親会」当日。
涼やかな風に乗って鈴虫の声が聞こえる。
楽しい空気が
===
懇親会の後。いっそそのまま眠ってしまいたかった。
この計画は
香澄本人は、これからやるべき行為が
「『芽の出ぬ
と。多分、僕の気を楽にさせようとして、
恋人だからといって、なんでもかんでも干渉するべきでないのは理解していると思っている。けれど、まるで
思わず大きな声を出した僕に香澄は笑って「確かに自分のことではあるけど、君がちゃんとやってくれれば他人事だよ」と言った。
僕を眠らせなかったのはその一言なのかもしれない。
少なくとも、余分に時間を経過させることは
制御信号を
開いた胴部に手を入れて、
接続が問題ないことをその音で知って、準備しておいたプログラムを走らせる。腰椎ケーブル接続時に常に表示される通信量を示すグラフが10[log2(bytes)/sec.]程度を示す。まずは様子見だ。この段階が
胴体からはみ出した腸のように垂れ下がっている通信ケーブルの延長部を全て外して、元どおりにつなぎ直す。
通信量のグラフはほぼ直線を描いている。順調なようだ。
金属の重たい胸部の
通信量は
入れ替えられて良いのか。苦痛を味わった人を味わっていない人に。いや、バグを生むデータは消されるべきなのではないか。しかし、それを認めるということは香澄は。
プログラムは僕の逡巡を完全に無視して動作を終えた。“Complete. Error: 0” のダイアログと共に、通信量のグラフは
香澄は目を開けて僕を認めると、いたずらっぽく言う。
「バックアップは大事だろう?」
そうして香澄は、彼女を抱きしめて自分自身わけもわからず涙を流している僕の背中を、大袈裟な奴め、と呟きながら軽く叩いた。片手間に。
僕の彼女はクラウドに。 下道溥 @AmaneShimotsumichi
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