機械としての
コポコポとお湯が沸く音を聞きながら、伸びをする。破滅的な音が心地よく自分の背骨から実験室に響く。彼女はベッドに座り、ケーブルに繋がったまま足を組み、目を閉じる。僕には当然よくわからないのだが、「画面」を開くときにはこの方がいいらしい。理屈の上では、目を閉じているかどうかに関係はないと思うのだが。
「メール、チェックしておいたよ。君のところに来るのはジャンクばっかりだ。でも、この2通は見た方がいい」
「はいはい、なに?『
「ドブネズミの駆除の話から、性行為の話に移る流れが素晴らしく良くできてる」
「ジャンクじゃないか」
「文学と呼びたいね」
「オオアリクイに
「確かに意外性はなくなったかもしれないが、現実味が増したともいえるさ」
コーヒーをマグに注ぎ、
香澄は、飲み干したマグをベッドの上に雑に置くと、また、
彼女は、優しい微笑みをたたえたまま微動だにしない。多分、意識の上ではたくさんの画面が飛び交っているのだろう。通信量を示すグラフの値が30.3[log2(bytes)/sec.]あたりまで急上昇し、すぐ10以下に戻る。何かを
でも、彼女の表情が楽しさの周りで踊っているので、僕は、それを好ましく思った。
さて、午前中にやるべきだったアップデートもエラーログの回収・分析も終わって、お昼ご飯を食べに学食に来ていた。飲食店に恵まれないこのキャンパスでは、
それにしてもお腹が空いた。昨日の晩以来食べていないから、
「ぐぅ」
腹の虫がなった。すぐさま香澄がクスクス笑う。箸が転んでもおかしい年頃ってわけじゃないだろうに。
「そういう笑い方すると、交換が早くなるぞ」
少しムッとして八つ当たりする。一応、事実だが。そういう
「ははっ、誤差でしょ」
「おっしゃる通り」
「ところで、それ、もらっていい?」
「ああ、いいよ。はい」
箸でミートボールをつまみ、口元へ持っていく。子供っぽい、とは思うけれど、香澄は意外とこういうのが好きだ。はずかしめるためにこれが好きだと言っている節がない、とは思わないけれど。
もし、ここが第三食堂じゃなければ
少し「お
ミートボールの運命としては
僕はそんなことを考えながら、
と、そのとき、
曰く、
「初めてのトイレだ」
と。
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