第五十一章、『コメット~初恋』
第408話、さよならってやだね、終わらなきゃいいのに
「うおおおああああああっー!!」
「なん……だとおぉっ!?」
驚愕の声を上げたのは。
ナオであったか圭太であったか。
構わず知己は、ハートオブゴールド……いや、【紅侵圭態】の呪縛を解き、立ち上がりその流れで両手のひらを腰だめに構える。
刹那、両の手のひらには。
もはやはっきりと世界に具現化した虹そのものが生まれようとしていて。
「『I(いつのまにやら)F(フル充電)』作戦、発動でやんすよおぉぉっ!!」
理屈を語れば、長くなるのかもしれない。
恐らくは、二人のシンフォニックカーヴ、『チェイジング・リヴァレー』が関わっているのだろうが……。
「ば、ばかなっ。戒めを破るに飽き足らず、力を溜めていただと……っ!?」
一体、いつから『そう』していたのか。
気づけば法久は、知己の力を溜めに溜め、最大限にまで引き絞り、放つ機会を伺っていたらしい。
漏れ出た言葉とは裏腹に、呆けた笑みも出ようというもので。
「…………【太極魂奏】っっっ!!」
それは、その言葉は。
極限まで力込められし、知己のカーヴ能力、その正式な名前である。
あまりに強力すぎて、身に余りあると言う事で、封印せしめたもの。
その封印は。
法久が傍にいて、かつ二人の『シンフォニックカーヴ』を発動し、力を際限なく高めることでようやく発現できるものであった。
今の今まで必要とされる機会はなかったどころか、知己自身……敢えてその存在を半ば忘れかけていたくらいで。
そこまでしなければ。
かつての仲間、圭太とナオの命を賭した引き止め、お節介には叶わない。
ほぼほぼ一発勝負に等しかったそれは。
当然のごとくろくにコントロールもできなくて。
すべてを吐き出したい衝動のまま、知己の全身から生み出されたのは真なる虹色であった。
かつて、七瀬大一もカーヴ能力者として虹を操り、具現化させていたが。
それと比べても一線を画すもの、すでにカーヴ能力の範疇は超えており。
それはもう自然そのもの……世界を構成するものと言ってもよかった。
雨のあとにいたずらに視覚化する、七色の超高温の大気。
単一で空を彩れば、オーロラと呼ぶに等しいそれは。
それらを予測し、できる限り密着していた法久すら巻き込んで。
ナオも、圭太も、彼らを取り巻く蘇りしものたちも。
赤と黒の傀儡たちも。
その世界……異世ごと、無慈悲に飲み込んでゆく。
「ぐっ……そがあああぁぁっ! むちゃくちゃやりやがってえぇぇっ!!」
「……これが。かつて望んでいた『死』、か」
「自分だけ助かるなんて、うまい話はなかってでやんすか……」
その瞬間。
聞こえてきたのは、三者三様なそんな呟きで。
それに、気の利いたセリフを返す暇もあらばこそ。
世界は……かりそめの世界は。
まるでどこかで見たことがあるような。
そんな滅びを迎えていて……。
(第409話につづく)
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