2-⑭ 許せミリア
混乱した状況を直すため、ヴァン、ミリア、グレイが向かい合うような形で、いわゆる鼎談形式で話し合うことにした。机をどかし、三つの椅子を円状に設置された場所で。
ヴァンは語った。
自分が最初に語っていたことは全て嘘であるということ。
ヴァンが生徒会室に来てからすぐ屋上に向かったこと。
屋上で邂逅したバース・セイクリッドと決闘の約束をしてきたと言うこと。
そこで何よりグレイの身に起きたこと。
最後の奴は他に比べて、3倍以上濃密に詳細を懇切丁寧に説明した。
そうした細やかな説明によりミリアの誤解は解くことができた。だがそれはミリアのふくれっ面に直結することになったが。
「どうしたミリア。何をそんなに不機嫌な顔をしている」
「不機嫌にもなりますよ!」
ヴァンが話しかけてきた方向とは正反対の方向に顔を向けるミリア。態度、行動、表情。どれをとっても怒りが隠されていない。
「ひどいじゃないですか! 完全な嘘をついて、私やせんぱいをからかおうとするところもそうですし! 私をのけ者にするところもそうですし!」
「『それに私の大切なせんぱいを守ってくれなかったのが一番ひどいです!』と言いたいのかなミリアくんは」
意地の悪そうな顔で笑いつつ、ヴァンにミリアは先程までの怒りを飛ばして驚いた。
「な、なんで分かったんですか! 会長の兆里眼再び発動ですか!」
ここで突っ込みを入れるのが普段のグレイだが、それはできなかった。
嬉しいやら恥ずかしいやらでグレイは顔を伏せながら半ば呆れていたからだ。驚きに支配されているミリアはそんなグレイの様子に気づいていなかったが。
「悪かった悪かった、許せミリア。これには理由があったのでな」
ヴァンは軽く笑いながらミリアの肩を軽く叩く仕草をする。実際に叩かないのはヴァンなりの女性に対する節度の現れだ。
「今回の作戦はなんと言っても速さが大切。下手をするとあいつらがどこかへ行ってしまうかもしれないからな。そうなると作戦を遂行しようにも出来ん。だからミリア、お前を置いていってもやむなしと考えたのだ」
「だからと言って置いてけぼりはひどいです! しかも前回に引き続きあたしは何も出来ていないじゃないですか!」
「だから悪かったと言っているのだ。このお詫びは」
「俺の部屋に入れるとかだったら俺が怒るからな!」
ヴァンの台詞におっ被せるように、グレイの一喝が飛んだ。それは完全ヴァンの言おうとしていたことらしく、一瞬困ったような顔をした。だがそれを勝ち誇る猶予も無く、ミリアが継いだ。
「あたしは大歓迎です! 是非ともせんぱいのお部屋でワイワイガヤガヤ盛り上がって、そのまませんぱいと同じベッドで眠るお泊まり会がしたいです!」
話題のとっかかりを見つけたのか、ヴァンの顔が奇妙に歪む。思いがけないおもちゃを見つけた悪ガキの表情と酷似していた。
「それは無理だろう。こいつの部屋は片付けられない男状態なのだから。一緒に寝間を共にするのは可能だろうが」
「そうなんですか? それでしたらあたしが行ってお掃除をしますよ! 出来る嫁としてせんぱいに魅力を訴えるまたとない好機です! あたしに任せてください!」
「んなわけあるか! 少なくとも最低限の清潔さを保ってはいるつもりだ!」
「さてそんなグレイの戯言は無視するとしよう。どうせいつものツンデレ的な見栄っ張りなのだから。それよりもミリア、少し気になったことがあるのだが」
「おいこら誤解されたまま話進めんなミリアにきちんと話付けてから話題転換しろ」
しかしそれは完全にヴァンは無視した。ミリアに向き直り感じていた疑問をぶつけた。
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