追想篇

第一章 移ろいゆく日常

 けたたましい携帯電話のアラーム音が静かな和室の一室に響き渡る。

 四月の半ばらしく少し暖かく涼しい。

 上品な机や本棚、和箪笥わだんすなどの家具に囲まれ、浴衣を身に纏った少女がゆっくりと目を開ける。

 また、左頬が濡れている気がする。

 起きたばかりで重い左腕をゆるゆると持ち上げ、頬にれる。

 やはり、一筋の涙で濡れていた。

 携帯の液晶に映る時刻を確認し、未だ重い体を無理矢理起こした。

 丁度、五時三十分だ。

 そして、机に向かう。

 少しかがめ、引き出しから筆で“日記帳”と書かれたノートを取り出す。

 正座で使うために作られた机__文机ふづくえはあまり屈まなくてもよく楽だ。


「はぁ」


 私___桜 蘭は少しため息をついた。

 また、だ。

 ここ一週間、ずっとこうなのだ。

 日記帳の一週間前の所を開ける。

 この日は夢を見ていた。

 詳しくは目覚めたとたん忘れてしまっていて覚えていないが誰か、恐らく大切な、いつも傍にいるような、それが当たり前な人が居なくなってしまうことが告げられたような内容だったと思う。

 それはそうとして今日のページを開く。

 だが、その夢を見た日以降、ぱたりと夢を見なくなった。

 代わりと言ってはなんだかまた頬が濡れていたことを書き込んでいく。

 可笑しな話だ。

 可笑しなことはこれだけではない。

 私と特に親しい友人たちもだがこれ以上誰も来ないはずなのに誰かを待つようにずっと立っていたり、毎度毎度人数分のペットボトルの飲み物プラス一本を買ってきたりと挙げ出すときりがなくなる。

 何故なのかと考えるのがここ数日の日課になっている。

 が、いつも答えがでない。

 いつまでもうだうだとしていられないので日記帳をもとの場所に戻した。

 朝起きたときに乱れたままだった浴衣を正し、髪をポニーテールよりは少し下の辺りで結い、自室から出る。

 今、私が住んでいる家と呼ぶべきか屋敷は桜家の本家で物凄く大きく初めて来た人は絶対に迷うという謎な自信がある。

 そんな屋敷は大阪の中心地から少し外れた所にあり、広い上に形が変。

 そんなこともありかなり周りの目を引く。

 まず、立派な門を潜る人一人座れるほどの石があり、正面に屋敷の玄関、右手側に蔵、左手側にそんじょそこらのとは比べられない程大きな庭がある。

 そんな庭には大きな老木がある。

 私が知っている中では一度も枯れたところを見たことがない桜の老木だ。

 その桜の名は姫桜ひめざくら

 この桜には対になる桜があると蔵の中で眠っていた文献に書いてあった。

 確か“かくりよ”にある常に枯れている桜、夕桜ゆうざくら

 これらの桜は咲いていると奇跡が起こる……と。

 片方だけでも奇跡___この世界があるという奇跡が起こるが夕桜が咲くともっと凄い、あり得ないような奇跡が起こるらしい。

 そして、この二つの桜はもともと一つの桜らしかった。

 このもともとの桜の名前を知りたかったが文献が古すぎて詳しいことも分からなかった。

 個人的には蔵の文献を一新したいなぁ。

 そんなどうでもいい感想を抱きながら縁側を進む。

 屋敷は五角形になっている。

 五角形の頂点ごとに五角形の小さな部屋が通路を挟みあり、鬼門きもん裏鬼門うらきもんと呼ばれる方角の塀に引っ付くように一つずつ部屋がある。

 風呂は五行ごぎょうに振り分けるとごんの間の通路にあり、その通路を通ってしか行けない外にある。

 台所は自室からかなり離れたところにあり、五行のすいと呼ばれる場所。

 私の目的地でもあり、やっと着いた。

 棚にかけてあるたすきたもとを縛る。

 ぱしりと両頬を挟み込むようにして叩き、未だ残る眠気を完璧に取り払ってしまう。

 まずは、大量の米を研いでいく。

 平行してこれまた大量の野菜も切っていく。

 初めて量を聞いたときは驚いたし、戸惑ったが最近では何も思わなくなった。

 私がさっきから鬼門だの五行だの言ってるのだと言われるがここではごく普通なことなのだ。

 この屋敷は何千年も前からここにある、陰陽師おんみょうじの一族の屋敷なのだ。

 その頃より私たちの一族は存在し、今の人形ひとがたで言葉を話していたそう。

 そして、その頃より人とあやかしとの調和をとってきた存在らしい。

 そのため、一族の中には親しみや畏怖、畏敬の意を込めて妖や一部の___同業者というかの人間からは妖神ようしんと呼ばれ、神格化されたものもいる。

 私たちの一族は長命らしく本家の血が濃ければ濃いほど長く、一番若く強い年の頃で成長が長い間止まり、二世紀ぐらいは生き、また一定の年になると年をとるそうだ。

 そう説明されたが私自身、あんまりよくわかっていない。

 関係の無い話だが私には一人、姉がいる。

 ことというのだが幼い頃から陰陽師としての才能があり、攻撃系の術が得意で中学卒業後、武者修行に出ていってしまった。

 それ以降は会えていない。

 風の便りでは高校にも行き、元気にやってるらしい。

 私とは九歳差なので今は二十二歳。

 両親は六歳の時に死んだ。

 その頃、本家に移り住んだ。

 琴はその数ヵ月後に中学校を卒業し、本家を出た。

 たった数ヵ月の間に両親、姉をも突然居なくなり、寂しくなかったと言えば嘘になるがなんとか頑張れた。

 寂しさを押し殺し、公園で一人泣いていたある時、とある女性が慰めてくれた。

 一人じゃない、きっと未来は楽しいことだらけだよ、そう言われた。

 その女性の名前は聞きそびれたが見覚えがある。

 だが、思い出せない。

 あともう一人、誰か何かをいってくれた気がする。

 そのお陰だった。

 父が死んでから次の当主が決まるまで祖母が代理となっている。

 私は姉さんと違って術なんか使えないんだから姉さんを当主にすればいいのに。

 私が一切術が使えないのは可笑しなことらしく初代様、二代目様以外の当主様方が頭を悩ませていることは知っている。

 何故そのお二方は頭を悩ませていないのかと言うと理由は簡単。

 居ないのだ。

 初代様は妖神として神々の世界にいらし、二代目様は任務中に行方不明という風に三代目様から聞いた。

 そこまでぼーっと考え、いつも通り朝御飯の出来映えを確認する。


          ○


「おはよう」


 いつも通り挨拶をする。


「おはよーさん」


 いつも通りりょうから返ってくる返事。

 可愛い顔に反して負けん気が強く、剣道が上手うまく、三年生の先輩相手に白星を挙げている。

 可笑しな行動をしている一人でもある。

 始業を告げるチャイムがなる。

 廊下に出ていた生徒、教室の一つの机に集まり喋っていた生徒たちがわらわらと自分の席に着いた。

 今日もまたの一日が過ぎていく。

 なにも変わらない、いつも通りの日々。

 窓の外では柔らかな春の陽射しを浴びて桜が舞ってる。

 そんな桜の木にはちらほらと青々しく、夏を彷彿させる葉が付き始めていた。

 空は驚くほど高く澄んでおり、雲一つ無い。

 ただぼんやりと消えかけの少し欠けた月が残っているだけだった。

 息を吹きかければ飛んでいってしまいそうな儚い月。

 あれぐらい欠けた月って何て言うんだっけ。

 あぁ、そうだ。

 更待月ふけまちづきだ。

 暖かい風が頬をでる。

 授業をしている先生の声がいやに遠く聞こえる。


 _________


 今までに感じたことのないほどの強烈な耳鳴りに襲われた。

 思わず耳を塞ぐ。

 それに被せるように目も開けていられないほど強烈な眩暈めまい


『__ごめん』


 脳に直接響くようなたった一言、ありふれたその言葉が私の胸に深く突き刺さる。

 ただただ辛そうな、寂しそうな、悲しそうな、切なそうな、感情を押し殺した声。

 知らない男の子の声だ。

 なのにどうして。


 __嘘吐き


 その言葉が頭中に響き渡る。

 それと同時に身体中に走るどうしようもないほどの切なさ。

 一体何が起こっているんだ。

 ぎゅっと目を閉じるとスノーノイズの中に人がいる。

 その人に向かって私が必死に手を伸ばしている。


「蘭。大丈夫?汗びっしょりやで」


 涼のその言葉で一気に現実に引き戻されるように感じた。

 どうやらいつの間にか授業は終わっていたらしく、涼が心配そうに私の顔を覗き込んでいる。


「平気。ちょっとしんどかっただけだから。」


 いつも通り言ったつもりだった微かに震えていた。


「平気ちゃうやろ。泣いてんで」


 そう言われはっとし、確認してみると確かに頬が濡れている。

 そこには確かに頬が一筋の涙で濡れていた。

 私が手を頬にあて確認したまま呆けていると涼は思案するような顔つきになった。


「あんたもう帰り」


 涼はそう言うや否やてきぱきと私が家に帰る準備を進めていき、気が付くと私は帰路に就いていた。

 中学に上がってからというもの、ちょっと耳鳴りがしたり、軽く眩暈は増えてはいたがここまでひどいということはなかった。

 まるで何かの前兆かのような……。

 まさか、考えすぎか。

 いつの間にか家の門まで来ていた。


「ただいま戻りましたー」


 大きく重い門を軽く押すとそのまますっと開く。

 深くは考えたことはなかったが少し不思議だ。


「蘭かぃ。早いお帰りだねぇ」


 門のすぐ近くにある石に腰を掛けて太股に右肱みぎひじをついてこちらを見ている。

 この方は三代目・みやび様。

 私のひいおばあ様にあたる。

 雅の名に相応しいようなゆったりとした雰囲気だ。


「体調が優れなくって」


 浅葱あさぎ色の下地にきつくない優しい白の帯。


「そう。おかえり」


 私が帰ってきたことに気が付いたのか、ひいおばあ様やおばあ様の弟子の人たちが口々におかえり、と言われる。

 その一つ一つに応えながら家の中に入ろうとするとひいおばあ様に止められた。


「そうそう、思い出した。四代目がお呼びよ。早くお行き」


 自分の娘に当たる、れい様を四代目と呼ぶということは桜家の家業関連である、妖、陰陽師関連だろう。

 そう仮定しながら着替える為にまずは自室に向かう。


         ○


「蘭にはかくりよに行ってもらうことになった」


 四代目の自室に入ってすぐ唐突に告げられた。

 普通はどんな用事の時でも必ず他愛もない事から入るのに珍しい。

 こんな風に別の事を考えている。

 完全に現実逃避に近い。

 私がかくりよへ?

 何かの間違いだ、きっと。


「かくりよの妖狐の一族の屋敷に厄介になってもらう」


 いつものような穏やかな口調ではなく、桜家四代目としての淡々とした口調だ。


「どういうことですか?」


 現実逃避から無理矢理戻ってきてなんとか言葉を紡ぐ。


「そのままの意味だ。約一年ほど行ってもらう。現世うつしよの方では転校したということにしておく」


 それだけ言い切ると、今週末には行かせるからそのつもりで準備をしておきなさい、と出ていってしまった。

 ポツンと一人残された私はおばあ様から言われた言葉を頭の中で反芻はんすうする。

 現世は人間が多く住む世界でかくりよは妖怪や幽霊などが多い世界で……。

 今週末からそこに住…む…?

 少しずつ理解をしていく頭。

 冷静になり、その意味を完全に理解した。


「えぇー!」


 おばあ様が出ていって約五分後、私の大絶叫が屋敷中に響く。

 庭の姫桜に止まっていた鳥が慌ただしく飛び立った。


          ○


 とうとうとやって来た。

 突然の命令より数日経った週末。

 一応、転校ということになり、ばたばたとしていた。

 恐らく一年で帰って来れるだろうということを私の家の事情もよく知っている涼に言うとふーん、気ぃつけや、と言われた。

 荷物は先におばあ様がかくりよのお世話になる屋敷に送ってくださっているのでなく、桜家の代表とし行くので唯一の着物であり、私のとっての正装である紫蘭をあしらった淡い黄色の生地に白い帯のものを着ている。

 正装というのは桜家は代々京都にある妖の営む老舗呉服屋に特注してある汚れず、破けないものでその人が産まれた時、その人をイメージして糸の一本一本、染料の一つ一つにまでこだわってつくってもらったものを桜家の一人一人のものをそう呼んでいる。

 かくりよの方にもその店の支店があり、そこは京都にある本店の女将の妹が営んでいるらしい。

 朝は早く、まだ辺りは薄暗い。


「準備はいいかい?」


 大きな庭には雅様や本家の傘下さんかにいる妖がたくさん集まっていた。

 私を見送るためだ。


「はい」


 おばあ様が目を閉じる。

 周りの空気が変わった。

 一陣の強い風が吹く。

 思わず目を腕で覆い閉じる。

 うっすらと甘い香りがする。

 風が収まるのを感じ、覆っていた手を恐る恐る退けた。


「ここは……」


 見たことのない場所に立っている。

 私の家のような大きな門だがそこから覗く屋敷はどこぞの武家屋敷のようだった。


「そこでこそこそと何をしている」


 後ろから突然声を掛けられ、肩がびくりと揺れた。

 恐る恐ると振り返るとあやしみながらこちらの様子をうかがっている人間に動物の、犬のような耳と尾を生やし、はかまを着ている男の人がいた。


「怪しいやつだな」


 その後ろにも似たような人がぞろぞろと。

 問い詰められあわあわ、きょろきょろとしてしまう。

 それがなお怪しく見えるようでいつの間にか囲まれてしまっていた。

 まさに一触即発。

 というか一対多数ということもあり、何かちょっとでも可笑しな行動をすると殴りかかって来られタコ殴りにされそうな雰囲気だ。

 そんな恐ろしい雰囲気を打ち破ったのはさっきまでの恐い人たちよりも少し幼さが残るような、しかししっかりとした芯のある声だった。

 どこかで聞いたことのある声な気がする。

 だが、いつ、どこでだったかは思い出せない。


「そこで固まって何をしてるんだ」


 すると弾かれたように私を囲んでいた人たちが声の方にかしこまった。


しゅう様。門の前に怪しいやつがいまして」


 私は未だに囲まれており逃げようにも逃げられない。

 門の方の人の檻が捌け、声のぬしが見えた。

 背は私よりも数cm程度高く、黒髪に私を囲んでいた人たちのような黒の尾、耳を生やしている。

 服も黒っぽい着流しに羽織を羽織っている。

 全体的に黒いイメージだが決して地味ではなく華があると言うかオーラがある。

 整った顔をしており、世間でいう“かっこいい”という部類に入ると思う。

 厳しく引き締めているような固い表情だ。

 私よりも随分と大人っぽい。


「蘭、か…?」


 その人はなぜか私の名を呼び、私の事を捉えた瞬間に目を見開いた。

 まるで死人にでもあったかのような驚きようだ。

 しかしそれも一瞬の事ですぐにさっきまでの顔に戻り、周りにいた人たちに私のことを客人だ、という風にいい屋敷の中に入れてくれた。

 ちょこまかとその人の後ろをついて歩く。

 無言の沈黙がつらい。


「あのぉ、お名前をお聞きしても?」


 取り敢えず、この嫌な空気を払拭したかった。


「……柊だ。ひいらぎと書いて、柊」


 前を向いたままそう言った。

 意図的に感情を込めないように言っているように聞こえる。


「柊さんですか。初めまして。私は桜 蘭と言います」

 これからよろしくお願いします、という風に微笑んで言うとうっすらと寂しそうな顔をし、初めまして、か、と呟き、目だけ少し振り返り、よろしく、と。


「どこかでお会いしてました?」


 100%会ってないと言い切られないがたぶん会ってないはずだ。

 こんなにかっこいい人ならば記憶に残るだろう。


「いや、気にしないでくれ。ただの独り言だ。それと敬語とさん付けはやめてくれ、同い年だしな」


 はい、と答えそうになりうん、と答えた。

 同い年ってことは十三歳ぐらいか。

 何で私の年や名前を知ってるんだろう。

 事前に聞いていたのだろうか。


「これからはここが蘭の部屋だ。先に届いてある荷物も置いてある。自分の使いやすいように配置しといてくれ」


 私の部屋だ、とあてがわれた部屋は今まで使っていた部屋とほとんど変わっておらず、開けられた障子からこぼれる景色には枯れている木があった。


「あの木って…」


 かくりよの妖狐の一族の屋敷にある枯れた桜というと……。


「夕桜だな」


 それ以上何も言うことはなく、後で呼びに来る、と言うなり何処かへ行ってしまった。

 近くにある塀にぬえが留まっている。

 確か妖狐一族が治めているこの辺り一帯は鳥形の鵺がたくさんいる。

 鵺にもたくさんのしゅがあり、“源平盛衰記”や“平家物語”で出てきたような見た目の鵺もいる。

 こちらをじっと見つめひゅう、と短く鳴き飛び去った。


          ○


 辺りは現世の春の夜よりもひんやりとし、かなり肌寒い。

 お風呂でしっかりと温もったはずなんだけどなぁ。

 もともとかくりよは現世よりもあやかしが多く居るため寒くなる。

 詳しいことはあまりわかってないが妖が放つ妖力ようりょく云々うんぬんと読んだことがある。

 こっちに来て柊と会い、別れた後、応接間と言うか客間というのか分からない部屋に連れていってもらい、ここの当主様、その奥方様にご挨拶をし、これからのことを少し話した。

 その結果、明日から私塾しじゅく__現世でいう学校とか寺子屋のようなもの__にお試し的に行くことが決まった。

 そして、炊事を手伝うことになった。

 しなくてもいいと言われたがお世話になっているのに何もしないのは私的に嫌なので頼み込んだ。

 最初、この屋敷にいる人たちはどんな人かわからずにびくびくしていたが当主様や奥方様、屋敷に出入りしている方々も優しい人らしく安心した。

 当主様や奥方様に至っては自分達のことを本当の親だというように接してくれ、と言われたぐらいだった。

 お二人は私の父や母とも仲が良かったらしく、とても可愛がってくれている。

 これから大変だろうけど頑張れ、とも励ましてくれた。

 明日は私塾か、ちょっと楽しみだな。

 記憶が正しければ現世みたいに年齢でクラスが決まるのではなく、能力などで決まる。

 布団の中でごろごろとしながら一日を振り返ってみる。

 結構濃い一日だった。

 明日はもっと濃いのだろうか、妖は個性的なのが多いし。

 取り敢えず、慣れるまでは柊と同じ教室でということになった。

 勉強なら頑張ればなんとかなるが術になると厄介だな。

 悠長に考えながら夜は過ぎていく。

 夜空は現世と違い、星がまばたいている。

 かくりよには人工的な明かりはあんまりつけられていないからだ。

 外を眺めるために障子は少し開けておいたがそろそろ閉めよう。

 うつらうつらと閉めに布団から這い出て外を見るとかくりよらしく、たくさんの火の玉や妖が跋扈ばっこしている。

 それを見なかったことにしもう一度布団に入り私は深い眠りに落ちていった。

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