セーマン、ドーマン

不動(いするぎ)薫

セーマンドーマン

 世の中には不思議な人がたくさんいる。私もそのなかに入るのかもしれない。

 私は祈祷師。悪霊をやっつけるゴーストバスター。陰陽師とはまた違う。陰陽師が神道で祈祷師は仏教にも神様とよばれ、死霊を呼ぶ女性がいる。ごく、普通のおばちゃんだ。

 祈祷は民間信仰で、空海によって開かれた。呪術をもって霊現象を静めるが、まっこうくさいものではなく、宇宙論なのだ。

 例えばお釈迦様はこの大宇宙。大日如来は太陽。観音様は月。三十三に姿を変えて自然現象を司るが、本体はひとつ。不動明王は大日如来の使い。つまり、太陽の使いだから光、というぐあいに。

 それに対して陰陽士は

天文学を基盤どしている。

共通点もある。自身の安全のためにも使うおまじない、ドーマン、セーマンをご存じだろうか。ドーマンとは芦屋道満に由来し、セーマンは有名な陰陽士、安倍清兵衛に由来する図形。誰もが何気なく描いたことのある星の形。ひとつに繋がった終わりのない世界をあらわす。これは祈祷にもお守りや悪霊払いにつかう。

 ただ私は浄霊はしても徐霊はあまりしない。霊に優しい祈祷師なのだ。なぜなら、我々のほうが後からやって来た。もともと霊魂の世界に、ほんの百年ばかり修行にお邪魔している。先住民に向かってどけと言うのは失礼千万。おめーが退けろと言われそう。

 それにしても、世の中変わるもの。神秘に満ちていたこの真言密教のドーマンセーマンも今やアプリでとれる。かくいう私も呪文集と般若心経のアプリをとっている。 

 はてさて、弘法大師様は

喜んでおられるのか、嘆いておられるのか。いずれにしてもお口あんぐりが見えるようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

セーマン、ドーマン 不動(いするぎ)薫 @Isurugikaoru1222

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る