もう少し未来のお話・夫の日記
「やん♡ 中さん……そんな所に手を……もっと♡」
―――リツコさん、頼むさかいに思い出してぇな。やいニャンコ、思い出せ~。
「にゃふふふふ……にゃ~う♡ にゃ~う!」
レイと楓君の結婚式に向けての準備が進んでいます。式の準備が進むほどに夫が夢に出てくることが増えてきました。夢の中とはいえ会えるのは嬉しいんだけど、お願いだからそんな所に手を突っ込んでコチョコチョしないで!
―――お願いやから思い出してっ! 日記! 日記に……。
「日記……日記?」
楽しい様な悪夢のような、スッキリしないけれどバッチリ目が覚めました。時刻は午前五時、我が家で起きているのは私だけ。朝ごはんまで少し時間があります。
「日記に何か書いてあったのかな?」
数年前に物置の掃除で出てきた夫の日記は何度も読み返したせいでヨレヨレになってしまいました。
「やれやれ、私も老眼鏡のお世話になる歳になりましたよっと」
娘が「今どき紙の日記なんて」とスキャンして残してくれたけど、内容に『
「ぜ~んぶ覚えるほど読んじゃったんだけどなぁ……あれ?」
日記の最後に袋状になった部分があります。そういえばここに手紙が入っていたような? 捨てたりなんかしてないはずなんだけど……どこにしまったんだっけ?
「やれやれ、年は取りたくないわねぇ……」
◆ ◆ ◆
「金一郎さん、この『白バイ隊員の先導で式場まで馬車で移動』って何かしら?」
「ん、それは
億田のおじ様が式のプロデュースを引き受けてくれたのはありがたいけど、内容が「どこのロイヤルウエディングだい?」って言いたくなるような内容です。奥様がブレーキ役をしてくれていなかったらとんでもないことになるはずです。
「奥様、不許可で」
「私も見たいけれど不許可です」
「でもレイちゃん、お義母さんは『
あと、
「くっそ、お義母さまが尊すぎる……」
お義母さまをはじめとする女性隊員で固められた『真・星組』は男性にはそれほどではありませんが女性に大人気になりました。ファンとのふれあいも問題なし、男性よりも親しみやすく女性の気持ちがわかるイケメン集団(女性だけど)になりました。女性が女性を応援するのは浮気じゃありません、あくまで応援ですから……って、どうでもええわ。
「それで楓ちゃんが『ちょっと説教してくる』って電話してるんか」
「白バイ隊員を私用で使うなんて不許可です、見たいですけど」
奥様の本音が漏れました。この世界に男装の麗人が嫌いな女性が居るでしょうか? 愚問すぎて答える気にもなりません。それでも息子の結婚式の誘導に県警の白バイ隊を使うのは『元・高嶋署の白き鷹』とはいえ公私混同甚だしいです。
「司会は女優であり声優でもある葛城美紀の予定なんやけど」
「大島サイクルゆかりの人ですからOK、むしろ見たいです」
「私も見たい、でも結婚の意思が揺らがんやろか?」
美紀様は『男装の麗人』として一世を風靡した舞台女優でした。腰を痛めてからは舞台女優としての一線を退いて俳優・声優として活躍中です。特に声優として『シン・美少年戦士ブレザースターズ』で演じた(長いので中略)なので『五百億円の男』と呼ばれています。女性なのに(笑)
「レイちゃん、男装の麗人は別腹よ♡」
「ま、美紀様は別腹ってことで♡」
「飯が入るお腹に甘いものが入るお腹、赤ちゃんが居るお腹。レイちゃんは何個お腹があるんや?」
おじ様は「牛の胃袋じゃあるまいし」とぶつくさ言っています。当然ですが馬車でパレードは無くなりました。ホッとしていたら楓ちゃんが戻ってきました。
「やれやれ、何とか説得できた」
もちろん白バイの先導も無しです。私たち二人は結婚式より結婚後の生活にお金を残しておきたいのです。それでも幼い頃に可愛がってくれた
「おじ様、派手な演出よりもお料理や引き出物に予算を回してほしいです……」
「僕もそう思います。でもお色直しは―――」
父がよく『要らん所に金を使わない、使うべきところに使う』と言っていました。式は私たちが主役かもしれませんが、来てくださるお客様をもてなすのも大切だと思います。お客さまをもてなすために少しだけ楽しい演出をしようと思います。
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