150万PV突破記念・もう少し未来のお話②

 流れに身を任せて楓ちゃんに抱かれたあの夜……。流れで来たあっちも悪いし、忘れていつもの様にくっついた私も悪かった。


「付けんと中で出すからや」

「レイちゃんだって離さなかったくせに」


 お母さんがいつも言っている「元気が有れば何でもできる」だったわけで……。うん、確かに元気やった。まるでパン・ゴールで売ってる焼きたてミルクフランスみたいにカチカチやったな。


「レイちゃん」

「楓ちゃん、お母さんが言った通り『元気があれば何でもできる』や」


 胃の具合が悪いのか、何となく食欲が無くお酒を飲む気にならない日が続いた。私の様子は会長を通じて奥様へ伝わり、心配した億田の奥様に勧められて診察を受けた結果は大当たり。中に出したのは一度だけなのに、なんて命中率。あれだけ頑張って私しかできんかったお父さんと大違いや。アレやな、若いからやな、うん。


「妊娠三週目やって、多分あの時やな」

「だね」


 父や母の若い頃ならともかく、今は婚前交渉は普通だし、妊娠を切っ掛けに結婚するのは珍しくないと思う。でも出来れば二人きりで甘々な新婚生活とかしたかったかな? う~ん、『明るい家族計画』とはよく言ったもんだ。


「実家に連絡するから、チョット待っててね」

「うん」


 楓ちゃんが驚いた様子で携帯から耳を離した。楓ちゃんが左手に持った携帯から薫おじ様の「なにっ! お前なぁ! 職人として半人前やのに!」って声が聞こえた。おじ様ってあんな大声を出すんやなぁと思っていたら楓ちゃんが携帯を差し出した。


「父さんが代われって」

「うん」


 おじ様はとにかく大慌て、早口で何を言ってるかよくわからなかったけど「とりあえずそちらへご挨拶に行く」はわかった。普段なら薫おじさま達と会うのは凄く楽しみなのに、今回は少し気が重い。


「もう一回楓ちゃんにかわ……切れてしもた」


 とりあえず会長と奥様に報告した方が良いし、もちろん母とも話をしなければいけない。私が楓ちゃんに嫁いだら母はどうなるのだろう。楓ちゃんは実家を継ぐための修行で高嶋市に来ているわけだから修行が終われば大津へ帰ることになる。


「億田さんにも報告しなきゃだね」


 億田のおじ様は父が亡くなって以来、私の後見人って言うか父親代わりになってくれている大恩人。報告しなければいけないけれど、けっこう古風な所があるからメチャクチャ叱られそうな気がする。いや、叱られたところでどうしようもないんやけどさ。


「奥様はいいとして、おじ様は『順序が違うやろっ!』って怒るかも。それよりお母さんがなぁ」


 楓ちゃんは色々と考える私に「リツコさんなら大丈夫」と何の根拠も無い事を呟いた。

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