第59話 Tataniが修理を断られる
「ふざけんじゃね~ぞ!こっちは客だ!お前等は文句を言わず、油にまみれて修理してりゃ良いんじゃ~!他に出すわボケ~!」
朝から受話器に怒鳴っているのはTatani代表の
今まで修理を外注していた店から電話が有り、
『警察の指導で書類やナンバーの無いバイクは修理預かりできない』
と実質、出入り禁止の宣告をされて怒っているのだ。
不正登録で大型自動二輪を原付登録したり、書類無し・車体番号無しのバイクに適当な番号をフレーム打刻して原付登録…等々。Tataniのバイクでまともな物は全く無い。最近はまともに登録したバイクまで無車検・無保険で走らせているくらいだ。
『相手に非が有ろうが無かろうがとにかく自分は悪くない』
典型的な
書類や車体ナンバーを他店に見せられた物ではないのだ。
警察に問合せされたり、検問で引っ掛かれば間違いなく捕まる。
そんなバイクを扱っていられるのは田舎ゆえの大らかさだろう。
「まぁええわ。修理屋くらい何ぼでもあるわい。」
缶チューハイを片手にパソコンで修理業者を調べる。
「ま~ずは、ここから行こうかな~っと。」
◆ ◆ ◆
「なんで何処も修理を断るのかな~♪修理屋ごときが~♪」
ヤケクソで歌っていたら楽しくなってきた。
何処へ電話をかけても修理を断られる。
朝から何件に電話したかわからない。足元には空き缶が散乱している。
他所が駄目なら地元かと電話をしたが全く電話に出やしない。
「どうなってるのかな~♪高嶋のバイク屋は~♪
頭がおかしいのかな~♪私は客なんです~♪」
(大津の店に出すと見下されるからな。出すなら守山か…)
酔っぱらって頭が回らない。
◆ ◆ ◆
「……と、いうわけで向こうから『他に出すわボケ~』だそうなので
向こうが頭を下げてきても相手しないように。以上」
琵琶湖を隔てた対岸のバイク店では
何事かと集まってきた社員に社長が伝えた。
「整備主任チーフ、Tataniが車両を持って来たら警察に連絡すること。」
それだけを言って事務室に戻って何やら電話をかけ始めた。
電話の相手は仲間の経営するバイク店。この日、社長は思いつく限り
片っ端から『Tataniという店のバイクに気をつけろ』と
伝えまくったのだった。
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