第60話 8月が終わる

8月の終盤となり、大島サイクルでは新学期に備え

オイル交換を済ませようと学生が多く来る。


朝から夕方までオイル交換ばかりしていると体中がオイル臭くなるように思える。


携帯が鳴っていたようだが接客中で取る間が無かった。

閉店後、一息ついて画面を見るとショートメールが入っていた。


『Tataniの修理依頼、断る事になりました。中村』


この前、はるばる湖の向こうから来たバイク整備士・中村さんからだ。


『了解。こちらも気を付けます。大島』と返事のメールを送る。


まだまだ暑いが一時期よりは秋が近付きつつあるのを感じるようになった。

(もうすぐバイクが楽しい季節になるな)


気候が良くなるほどにTataniの客らしきバイクの修理問い合わせが

増えている。車輪の会ホイラーズクラブの店にも修理の問い合わせがある。

どうやらTataniは外注に出す工場が見つからないらしい。

早く修理をして欲しい客が、市内の店に直接電話をかけてくる。


「個人とのお取引は行っておりません。販売店へご相談ください」

「ウチは大型バイクは修理出来ません」


とにかく断る。維持費を惜しんで不正な登録をする者がまともに

修理代金を払うとは思えない。君子危うきに近寄るべからず。

捨て台詞を吐かれようが何であろうがTataniの客はお断りだ。


ここ最近、今都からの自転車修理の問い合わせは来ない。

安曇河のホームセンターへ持って行くようになったようだ。


このところ葛城さんが店に来ない。

そろそろオイル交換に来ても良さそうだが、忙しいのだろう。


風呂に入り、夕食を済ませた途端に眠くなってきた。


(疲れた…もう俺は若くないんやな…)


時計は21時を少し回った所だが眠い。


(明日も忙しいやろうな…)



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