第二十三話、魔王と勇者

勝虎はまず相手の様子を確認するところから始めたのであった。それによってこれからの作戦を変えるつもりだからであるためである。相手が交換しなくなり始めてから一週間が過ぎようとしていた。そこで勝虎は自らまたしても一人で敵陣の様子を見に行くのであった。そこで見た光景は予想以上にひどい光景である。ある者は元気もなく倒れてまたある者はのどの渇きを忘れるために死体に残っている血を飲んでいたりとすでに陣の中は地獄となっていた。それは戦国時代で言うと三木城や鳥取城の再来であった。この二つの籠城戦は悲惨すぎるために勝虎はよく覚えていたのである。もしそれを生で見るとしたらこんな感じだろうなと思うのであった。



それを見た勝虎は早く楽にさせてあげないとと思い行動に移すのであった。まず最初に味方に少年兵を逃がすために説得から始まり何とか説得を完了させて次に敵軍に若い少年兵だけはこの場から逃がしてやると言ってから道を開けたのである。敵の少年兵たちは最初は敵の罠かもしれないと警戒していたが家にそして故郷に帰りたい気持ちもあり素直にそこから逃げたのであった。残った敵兵たちはできる限り苦しまずに楽にさせてやろうと考えたが敵の指揮官はそうさせるつもりはなかったのである。




その証拠に勝虎はあまりにも食べずに変わり果てた指揮官に食料を渡したのである。敵指揮官はそれを見てたまらずすぐに食べ物を入れたがその指揮官はそれを食べた後に急に苦しみだしてから息を引き取ったのである。勝虎はまあ、そうなるよなと言うような顔で敵指揮官を見つけるのであった。その後に敵兵たちに伝えるのであった。



「いままでよく戦った敵兵士たちよ、お前たちに残された道はこの通り死しかない。今、食べ物を食べたところでこの指揮官と同じ運命になるであろう・・・だが、お前たちはこの無能な指揮官の下でよく頑張ったと思うので我からささやかな水と食料をあげることにしよう。しかし、この食糧には強い睡眠薬も混ざっている。せめて苦しまずにあの世に行くがよい。そして・・・来世で幸せになれ。」



そう言って勝虎は敵一人一人に己が作った睡眠薬が混ざった里見の郷と水を配ったのである。敵兵は助からないことを悟り素直に食べ始めたのであった。最後の一瞬だが兵士たちは嬉しそうにしながらそのまま永眠する者が後を絶たなかったのである。勝虎は誰も生きている者はいなくなった後に




「必ず次にこの世界に生まれてくるときには平和な世の中にして見せるから・・・また、生まれてこい。」



そう言って勝虎は味方本陣に戻るのであった。この戦いの勝利に皆が喜んで本拠地に戻り始めていた時に勝虎はアーナスたちに俺はまだやることがあるから先に戻っていてと言って勝虎は先ほどから視線を感じる方向に走り始めたのである。それから勝虎はついに視線を感じるところから人を発見したのであった。




「人間よ・・・・こんなところで何をしている。」



勝虎はその者の素顔を見て一瞬驚いた顔になったがすぐにいつも通りの顔に戻り話したのであった。その者は勝虎を見て時間が止まったようにただ勝虎を見つめるのであった。そしてついにその者から



「ま・・・まさか、あなたは・・・いや、あなた様は先代勇者ではありませんか。私のことを覚えていますか。私はもともと騎士でありました・・・そしてあなた様に救われた少女の百合奈です。」



そう実は勝虎は今現在の勇者と実は知り合いであった。それは人であったつまり勇者であったころからそれなりに深い付き合いでありそして勝虎の弟子でもあった。そのためにいくら月魔族になっても勝虎のことを分かったのである。勝虎は仲いい人と話すように



「・・・・久しぶりだな、百合奈。元気であったかと聞いたところで元気そうだからな意味がないか。それよりも百合奈・・・よくここまで成長したな昔ならすぐに気配とかでばれるが今回は近くまで気づけなかったぞ。あれからよく努力したことが分かった。」



その言葉にただ百合奈は嘆くように言うのであった。



「どうしてですか。どうして勇者が魔王をやっているのですか。あの時に私を助けてくれた正義にそのまっすぐな瞳はどこに行ったのですか。それとも私を最初にあった時からだましていたのですか・・・何か言ってください。」



勝虎はいくら説明しても彼女は納得してくれないであろうと考えたのである。そのために勝虎が出した答えは



「今のお前に言うことはない。ただそれだけだ。」



それを言った瞬間、百合奈のレイピアが勝虎向かって突いてきたので勝虎はレイピアを投げ返したのであった。百合奈はそれを避けて勝虎を見つめるのである。しばらくにらみ合いが起きそこから話を再開させるのであった。それは勝虎の方から言うのであった。



「だいぶ強くなったようだがまだまだ俺には勝てる実力はないようだな。今からでも逃げていいぞ。お前の幼いころからの知り合いだ。できる限り殺したくはない。だが、お前が勇者である以上は・・・・そんな未来は来てほしくないものだな。」




勝虎はそう言いながらさらに話をしていったのである。それは彼女、百合奈との出会いを思い出しながら話をしていった。






今から十五年前、五代目魔王がまだ猛威を世界中に広まっていた時代、人類と神々が滅亡寸前と言われていた。人々はただ終わりを迎えるだけとなっていた。それほど魔王の力は強かったのである。勇者も何十人も殺されもう駄目だと思われていた。そしてとある村も魔王の脅威で滅びろうとしていた。





村人のとある少女であった百合奈はその時はまだ五歳であった。百合奈はそんな世間のことはあんまり詳しくなく一人の少女として楽しく暮らしていたがある日に魔法軍が侵攻を受けたのである。そんな時に当時、勇者をしていた勝虎が助けに来たのであった。小さかった百合奈にとっては一生忘れない出来事であった。そしてこの後の百合奈の人生を大きく分けた出来事になったのである。さらに勝虎が歴代最強の勇者と呼ばれることであった。



後に伝説の勇者の始まりとも呼ばれる戦いが後の勇者・百合奈との出会いでもあったのである。


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本日もちまして、魔王を退位します。 松永紅龍 @mekisikosaramannda-

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