第十話、変わらない思いを抱いて

戦いが始まり早くも一時間が経過しようとしていた。状況はやや勝虎の優勢であった。だが、一瞬でも油断をすれば一気に形勢が変わる状況でもあったのである。勝虎はそれを一番理解し油断せずに戦っていた。昔から戦ってきた者の染みついた行動とも言えるのであった。流石の聖龍も危ないなと感じたのか作戦を変えたのであった。勝虎は感じたのであった。おそらく聖龍は召喚をしてくるに違いない。問題なのは何を召喚してくることだった。強い魔獣でも駄目であるし名のある天使でも負ける可能性が一気に高くなるからであるため息をのんで警戒した。



そうして召喚されたのは二体だが勝虎はもちろんのことアレナやほかのエルフたちも衝撃を隠せないでいたのである。それはリーフとシーナの二人であったためであるから。それ以上に勝虎は二人がほとんど意識がないのを見て人形状態にされていることに分かったがそれで考えた状況を整理すると互角な状況でさらに強者の二人を加えると勝虎自身はそんなに長くはもたない。もちろん、ほかのエルフたちもかつての仲間もしくは英雄としていた者に攻撃はできない。だとすれば戦えるのは自分だけで勝算は非常に低くなったのである。普通なら逃げるのが一番の得策だがもしここで逃げて生き延びてもエルフの力は借りることはできなくなる。後に神々と戦争しても月魔族だけではどう頑張っても勝ち目はない。それこそ現代兵器をバンバン買える便利な能力があったなら話は別にがるが・・・今はそんなことを考えずに戦い勝機を見出すことしかできないと思い三対一の勝負になるのであった。



※ついでにここまで勝虎が考えていた時間は六秒である。



そうして召喚されたリーフ、シーナに聖龍の三人で戦局は聖龍側のほうが有利になっていたのである。勝虎も頑張っていたが徐々に疲れが出始めていたのである。その疲れがついに戦局に出てしまったのであった。勝虎が聖龍の尻尾に捕まってしまったのである。それを確認した聖龍が



「どうしたのかな、魔王殿。先ほどまではあれほど強がっていたのにたった二人の増援でここまでになるとは情けないですね。それともやはりあの二人には攻撃できませんか・・・・元77代目、勇者よ。」



そんなことを言われながら尻尾で地面にたたきつけられていた。勝虎の方も必死に抵抗するが努力むなしく無駄であった。だが、その時に一人のエルフが動き出したのであった。アレナであった。アレナは勝虎を助けようとしたがそれに気が付いた聖龍がリーフとシーナに足止めをするように命じたのであった。二人は人形のようにアレナの前に立ちふさがった。勝虎はアレナに向かってお前は来るなーと叫んだのであった。聖龍が気になりそこまでなぜあの娘に気をかけると聞いたのであった。勝虎は



「あの子の親がリーフとシーナの二人だ。あんなに仲がいい親子で争うところなんて見たくない。それに敵は俺だけだろう、聖龍。」



聖龍はそうかと言って二人にあることを命じたのであった。



「リーフにシーナ・・・・・自分たちの娘を殺せ。」



その言葉にその場にいる誰もが驚いたのであった。しかし、人形となっている二人はそれを承知したかのようにアレナに襲いだしたのであった。勝虎はただひたすらにアレナ、逃げろーと言うばかりであった。だが、アレナは逃げなかったのであった。むしろアレナは二人に立ち向かったのであった。その思いは親にこんなことをしてもらいたくない気持ちと勝虎を助けたいと言う思いがあったのである。そうしてリーフ、シーナ対アレナの戦いが始まった。アレナも二人の血を引いているだけにあって強かったが相手は二人の上に両親である。こちらの方も押され始めたのである。その間にも勝虎が



「リーフにシーナ殿、お前たちが死ぬ間際まで会いたかった娘だぞ。俺を攻撃、殺すことはわかるが自分たちの大切な娘と戦うなー。目を覚ませ。」



だがそんなことを言っても二人は止まりしなかったのである。そしてついにアレナは疲れ切り倒れてしまった。それを見た二人はとどめを刺そうとしたその時に二人の男性エルフも動いたのであった。それは族長と安田であった。二人はアレナを守るかのように立ちふさがったのである。族長が言うのであった。



「もうやめないか、リーフにシーナ。これ以上自分の娘に危害を加えるではないぞ。そんなこと族長として・・・いや、一人のエルフとして認めん。」



それに続くように安田も言うのである。



「お前たちとは昔から仲がよかった。だから言わせてもらう。それ以上娘と戦うつもりなら俺が娘の代わりに戦ってやる。」



それに続かのようにほかのエルフたちもアレナを守るかのように立ちふさがったのであった。それを見ていた聖龍は苛立ちのあまりに森にいるポイズンウルフを呼び寄せたのである。そうして聖龍が衝撃なことを語るのであった。




「お前たち、エルフを臣下に加えるつもりであった。そのためにわざわざポイズンウルフをここまで誘導させたのであったがもういい、こんな虫けらは必要ない。今すぐにポイズンウルフの餌食にしてやる。」



勝虎は心の底からこの聖龍が外道だと感じたのであった。エルフたちも驚いていた。間もなくポイズンウルフの群れがこの里に来るのである。最初は混乱したが一向に経ってもポイズンウルフの群れは来なかったのである。聖龍はなぜかと思っていた時に下級天使から連絡が来たのである。



「聖龍様に連絡します。里を守るかのように結界が張られ一か所に張られていない場所から侵入しようとしたところ月魔族でもエルフや人間でもない者に立ちふさがれましてポイズンウルフはもちろんのことほかの天使たちもここに増援できません。」



その報告を聞いた聖龍は怒りが頂点に達した。そうしてリーフにシーナに命じるのであった。



「二人に命じる、里のエルフを皆殺ししろ。」



そうして再び攻撃を開始したのであった。里のエルフみんなで戦ったがさすがと言うべきであろうリーフとシーナは平然と戦っていたのであった。そして激戦の最中でアレナはシーナの攻撃を食らい吹き飛ばされて気を失うのであった。





・・・・アレナは夢を見ていた。それは両親と仲良く暮らしている夢であった。それは楽しい毎日であった。それはまるで今までが悪い夢を見ていて現実に目を覚ましたかのように思えたのである。先ほどまでの戦いは悪い夢だと言うことに片して楽しい生活を満喫したのである。がある時に母、シーナからごめんね。そろそろあなたは目を覚ましてしまうと言ったのであったが最初はアレナも分からなかったが父、リーフも言い出したのであった。



「お前が戦っていた世界は夢ではない現実だ。どちらかと言えばこちらのほうが夢の世界だ。」


アレナは何を言っているのと戸惑っていたが二人はすぐにアレナに対して土下座をしたのであった。そうしながらこんなことをお願いするのであった。



「頼む、目を覚ましたら聖龍の目を狙ってほしい。あそこから人形となっている私たちを操っている。あの目をつぶせば我々に命令できなくなるだから。こんなことを頼む最低の親たちだが頼むお願いだ。神々の呪縛から解放させてくれ。」



アレナは静かにわかったと言ったのである。そして目が覚める前にアレナが



「必ず、お母さんとお父さんを救って見せるから待っていてね。」


そうしてアレナは夢の世界から消えたのであった。そこに残った二人はある人物に感謝するのであった。


「この場を作っていただきありがとうございます、災狐さん。」



災狐と呼ばれている者はそれはまさしく月魔族でもなくエルフ、人間、天使でもなかったそう正体は狐妖怪の九尾であった。その姿はあまりにも美しく女性でも惚れてしまうほどであったがその美容と巨大な妖気を出していたのである。そうして災狐と呼ばれている者が



「いいのじゃ。私がやりたいことをしたまでですから。それになかなかおもしそうじゃないですか。この戦いが・・・・・勇者から魔王となったあの子の人生がねえ。」



と不気味に笑い続けるのであった。




目を覚ました、アレナは急いで母の形見でもある弓で聖龍の目を狙ったのである。その弓はまるで母、シーナが宿った如く聖龍の右目に当たったのである。右目を弓矢で刺さった聖龍は大暴れした。そのすきに勝虎も何とか脱出に成功したのである。そして右目で操っていたと思われるシーナが人形師が操っていた糸が切れるかのように崩れたのである。それを見たリーフはシーナを殺そうとするがアレナがぎりぎり間に合い弓でガードしたのである。聖龍は右目をつぶしたアレナに向かって突進したのである。勝虎はそれに気が付き急いでアレナのところに向かおうとしたが距離があり間に合わないかと思われたその瞬間、一つの銃声の音が響いたのである。




その銃弾が向かった先は聖龍の左目であった。もちろん急のことで聖龍が避ける暇もなく左目もつぶれたのである。聖龍は両目を失い大暴れを始めたのである。勝虎はチャンスだと思い自身の最強の技でとどめを刺したのである。




「蒼い桜よ、月夜に舞え。そして今、すべてを滅しろ。月桜。」



そうして聖龍の周りに蒼い桜が包み隠したのであった。そして聖龍は蒼い桜になり散っていたのである。勝虎はその後、リーフとシーナにできる限りの魔力を注ぎ込んだのである。そして



「これで二人は明日の夜まで現世できるようにした。アレナ、家族と最後の時間だ。悔いないようにし・・・ろ。」


と言って勝虎はその場に倒れこんだのであった。族長は急いで勝虎を里の治療場に連れて行ったのである。



一方、アレナは家族と一日だけだが再会できたことに泣き喜んでいた。親の方もうれしくな泣いていたのである。それを確認した安田はその場を後にした。それには理由があった。



安田は先ほどは間違いなく銃弾の音であったことが気がかりであった。この世界にまだあるはずもない銃声が聞こえたのである。聞こえた場所に向かってみるとそこには誰もいなかったが一つ残されていた物があった。それは安田はどこかの旗だなと分かったがどこの国の旗まではわからなかったのである。ただ一文字の漢字が書かれあった。それが何を示すかはわからないでいたのであった。






その旗には大きく蜀と書かれている旗があっただけであった。









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