第7話 追憶

前書き


普段は三人称ですが、夢や想像、 過去などは一人称です御了承を

ーーーーーーーーーー


『お前のせいだ!』


 僕は、傭兵を始めてばかりの頃、20代近くの傭兵とチームを組んでいた時があった。


 何人くらいだったか。確か合計で120人くらいだったはずだ。


『そうだ。お前はチームに入っていた』


 声が聞こえたから振り返る。そこにはかつての戦友、ダニエルがいた。


『そして俺達は中東の武装組織の排除を命じらた』


 ああ覚えてる。到着した途端にザスマンの乗った車両が吹き飛ばされてたな。


『我々は奴ら武装組織の戦力を過小評価しすぎていた。そしてその時の指揮権はお前にあった。』


 今思い返しても全滅させる気満々の任務だった。

 こちらには相手の予想される戦力よりも良い装備を着用していたが、それでもだった。


『確か敵は200を越えていた。外には敵ヘリに戦車、中には大量の敵兵士。元より勝てる相手ではなかった。

そしてお前は中に入って一か八かで中の敵を何とか分断させ、撃破していく作戦を執った。』


『だが、結果からして作戦は大失敗に終わった。

俺達はそこの建物の内部構造を知らなかった。つまり、地の利は彼等にあった。罠を仕掛けられもした。罠にかかって地面が抜けて先導していたジョンが下にいた兵士に集中砲火を受け死んだ。』


 あぁ。下の兵士がこちらに気が付いて四方八方から敵が迫ってきて各個撃破どころじゃなかった。


『もう諦めて自殺した仲間も居た。自棄を起こして突っ込んで帰ってこなかった奴も居た!だが、お前は!指揮官のくせに指示も出さず!纏めようともしなかった!そのせいで大勢仲間が死んだ!

確かにお前は優秀だ、だが経験が圧倒的に足りなかった!お前が、お前が彼等を殺したんだ!』


 そうだ。僕が死なせたんだ

 そして僕は我を忘れるくらい必死に戦った。何発撃ったなんて覚えてない。

 気が付けば、仲間が全員死んでいた。そう。ダニエルも...


「なら、何故お前がここにいる」


 僕は出せる力全てを振り絞り、ダニエルを殴り付けた。


 ドゴン!


 鈍い音がした。だが不思議と痛みは全く感じなかった。

 するとどうだろうか、ダニエルが無数の鴉に変わり、どこかへ飛び立っていった。


 そして場所が中東の武装組織の拠点から傭兵御用達の酒場に変わり、そこに僕が居た。


『あの後、お前はチームを抜けたなクラウン』


 あれ以降、誰かと組むのが途轍もなく怖くなった。

 後ろを振り向くと今度は黒ずくめで黒ローブの男が立っていた。

 幕を掛けたような声で喋る。


『私は時の監視者だ。どこの世界でも共通のな。』

「何の用だ」

『聞くまでもないだろう?君に過去を"見せている"んだから私がここにいるのは当たり前だ?』

「何故見せるんだ」

『さぁな。気まぐれだよ』


 それだけ言ってどこかに消えた。

 

 また舞台が変わった


 僕の部屋だ。確か装備を開発するために半年近く籠もっていたんだっけな


『何故だ!なんで!僕のせいで仲間が!』


 当時の僕は幼かった。

 だから気が付かなかったんだ。僕の組んでいたチームは僕のことを疎ましく思って、殺そうとしていたんだ。

 だが、ここは誰も知らない。ましてやチームの奴らなどよる余地もない。


 だから、それに気付きもせず自分を責め続けた。


 いつだったか。今の相棒と会ったのは。あまりにも普通すぎて覚えていないな。





「.......ろ.....ん」

「起きろ、クラウン!」

「はっ!何が起きた?」

「いや、昼が来た」

「あぁ。おやすみ」


 布団を剥ぎ取られるクラウン。


「随分とうなされてたがどんな夢を見てたんだ?」

「傭兵をやり始めた時の夢だ。気分は最悪だ。」

「ははは、そりゃ最悪だな。」


 ははは、と苦笑いをこぼすクラウン達。

 息の合うコンビである。

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Mercenaries of the world―世界を跳び回る傭兵― 風来猫 七昼 @Izayoi_nabiru_kureha_1126

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