第4話 訪問


 

 まず、何故このような事になっているのか、

 それはクラウン達が街に着いたときまで遡る。


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到着直後、夜の城壁前


「おい、クラウン。どうやって入るんだ?門が閉まってるぞ?」

「まぁ、普通なら前で野宿だろうが、僕達は生憎と普通じゃないんだ。」


 クラウンはリュックから、アンカー射出機を取り出し、城壁の上、途切れるギリギリの所に打ち込み、固定した。


「上に見張りが居ないのは確認済みだ。僕に捕まってくれ。」

「了解した」


 相棒を担ぐクラウン。

 端から見れば相棒が気絶しているようにしか見えないのだが、見ている人など居ない。

 というか捕まるとうどういうことか、あまり理解していなさそうなのだが、そこはまぁ、クラウンだから、と。


 ワイヤーを掴み、上へ上へと登っていくクラウン。

 クラウン達は道具なしで壁を垂直に駆け上がる事が可能だが、それなりの音が立ってしまう。

 なので、音を立てないようにワイヤーを使った訳だ。


 何事もなく、上まで登りきったクラウン。


「暗いな」

「そうか?」


 彼等の目に見えるのは、暗く、静まり返った中世の街並み。

 クラウン基準だと普通、だが、あくまでクラウンだ。

 だが、実際のところどうなのかというと、街灯もないので、結構暗い。


「当面は傭兵やって金稼ぎか?」

「甘いな相棒、中世の傭兵なんぞ禄な事はないぞ?酒場にでも行くべきだな」

「裏、か。日本だろうがどこだろうが大体の酒場で受けられるのは伝統のようなもんか...」


 空いている酒場は、メインストリートから少しずれた所謂裏路地にあるらしい。

 裏路地なら、多少物音がしても誰も気にとめないだろう。


「裏路地だ。相棒、飛び降りるぞ」

「了解した。」


 飛び降りるクラウン達。

 30mくらいある場所から飛び降りても無傷な上、クレーターも作らない事が可能だ。

 普通に考えると、クレーターくらいはできるだろ。と、思うが、そこはやっぱりクラウン達。

 何か特殊な道具でも使っているのだろう。


 無言で進むクラウンと、無言でついて行く相棒。

 何事もなくつくなんて事はなく、


「おいおいにいちゃん。ちょっと金貸してくれよ」


 一応は裏路地なのだから、ごろつきも居るわけである。

 だが無視して進むクラウン達。


「おいおい、そんな立派なナリしてんだからよぉ。こんな貧しい俺に恵んでくれて良いじゃねえか」


 それでも無視して進むクラウン達。

 不意に、そのごろつきがニヤリと笑い、右手を挙げた。

 するとどうだろうか。そのころつきと同じような格好の奴らがぞろぞろと出てくるではないか。


 まぁ、クラウン達はごろつきに話しかけられる前から気が付いていたようだが。

 それでもやはり無視して進むクラウン達。


「チッ!お前等!やれ!」


 ごろつき共がクラウン達に挑み掛かろうと得物を抜く。

 だが、すでにそこにクラウン達は居ない。


 いつの間にかごろつき共の包囲を抜けていたようだ。


「お前たち構っていられるほど僕は暇じゃない。」


 若干、というか結構な威圧を込めてクラウンが言ったが、所詮はごろつき、といったところか。

 すぐに腰を抜かしてしまったようだ。


「行くぞ相棒。」

「処分しないのか。珍しいな」

「生憎地理に疎くてな。」

「そうだな。」


 それからは何事もなく、酒場に着いた。


 そこからクラウン達は酒場のマスター前に座り、


「なぁ、マスター。いい仕事ねぇかな?」

「......お前、名前は?」

「クラウンという。」

「過去をやった経験はあるか?」

「そりゃもちろん」

「......ふむ。ならこんなのはどうだ?」


 クラウンの前に出された一枚の書類。



依頼内容

ハーケン侯爵の息子、ゲイルの誘拐


備考

彼の寝室は三階の一番南の窓側の部屋。




「マスター。報酬と依頼主について書いてないが?」

「依頼主は教会だ。この依頼を受けたと伝わったなら、協会の前に赤の騎士がくるから、報酬金とゲイルの身柄を交換する。と、依頼主からの伝言だ。伝えるのは私がやる。」

「了解した。今から行っても問題ないよな?」


 と、不敵な笑みを浮かべるクラウン。

 どうやらマスターはその意図を汲み取ったようだ。


「もちろん。」

「ところで、ハーケン侯爵の屋敷はどこにあるんだ?」

「地図を見せてやろう。」


 地図を取り出すマスター。

 地図のある地点を指差した。


「ここだ。」

「記憶した。感謝する」

「あぁ、成功を祈っているよ」


 そうしてクラウン達は酒場を去った。


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