第3話 依頼


 ここはどこだろうか。

 転移装置の転移座標は地球に住む人類が行ったことのないであろう世界。

 所謂異世界だろう。


「クラウン。ここはどこかわかるか?」

「恐らく異世界だ。飛ばした僕でもこの辺りに詳しいってわけじゃない。

師匠と時空を弄ったときに偶々見つけたんだ。ここが必ずしも地球と同じ時間という訳でもないだろう。実際に転移前は夜だったが、今は昼だろ?」

「ある程度予想はしてたが・・・流石だなと言っておこう。」

「にしても異世界ね。ステータスとかってあるのかね。」

「地球と何一つ同じと言うことは無いだろう。やってみる価値はありそうだ。」


 心の中でステータスと呟く。

 半透明のウィンドウが出てくるわけだ。



名前:クラウン

職業:傭兵Lv92 暗殺者Lv51 ガーディアンLv60 スナイパーLv37 

ボディガードLv66 ルイナーLv17 執事Lv28


ステータス:Lv unknown

HP:unknown

MP:unknown

STR:unknown

DEF:unknown


MEN:unknown

INT:unknown

SPD:unknown

DEX:unknown

LUK:unknown


スキル:戦闘の極意Lv98 暗殺の極意Lv92 防衛の極意Lv79 護衛の極意Lv82 狙撃の極意Lv86 破壊の極意Lv64 従者の極意Lv57 作成の極意Lv75 

情報の極意Lv61 眼Lv―


称号:最強の傭兵 戦闘を極めし者 時空旅行者



 unknownね。かなりの不安要素だ。


「相棒、自分のステータスが見えるか?」

「あぁ。だが、ステータスにunknownがある。これはなんだ?」

「さぁな。だが、今まで無かったものだ。わからなくても問題は無いだろ」

「それもそうか」

「適当に走って町でも見つけるか」


 そう言い、リュックからバイクを取り出すクラウン。


「おま...!なんで明らかに口より大きいものが取り出せるんだよ!?」

「当然だろ?」

「わっけわかんねぇな!」


 どや顔で言うクラウンに半ば切れ気味で突っ込む相棒。

 彼らの間では何十回目かになるそのやりとりをしつつ、クラウンはバイクの準

備を進めている。


「相棒、長旅になる。心の準備をしておいてくれ」

「おいおいまじかよ。了解した」


 相棒の経験から、クラウンの言う少々は全く少々じゃない事を知っているため、どれほど走るんだ、と不安になりながらクラウンの方を眺める。


「相棒、準備はおわった。装備も積んだ。」

「あぁ。今回は何日走るんだ?」

「...12時間だ。」

「珍しいな。もっと掛かるかと思ってたぞ?」

「僕をなんだと思ってるんだ。」

「ふむ。鬼畜傭兵かな?」

「捻るぞ?」

「おー。怖いねー。」

「...まぁいい。とにかく出発だ。離れるなよ」


 おおよそバイクと呼べるものに跨がり、エンジンをかけるクラウン。

 だが、エンジン音が全くと言って良いほどしない。

 相棒は、まぁ、クラウンだからな。と半ば自棄になってエンジンをかけ、ヘルメットを被り、クラウンが出発したのを見て、相棒も出発する。


 スピードメーターを見ると軽く400キロとか出てるけど、相棒は、まぁ、クラウンだしな。と、諦めることにした。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 そして、約12時間後、街灯等が当然ないわけだから、当然暗い。


 時刻は12時。


「クラウン。どうするんだ?門閉まってるぞ?」

「何も門から入る必要は無いだろう」


 リュックから杭を取り出し、流れるような動作で壁に刺すクラウン。

 そして、杭を少しいじり、固定した。


 実は、この杭い一見只の杭だか、仕掛けがあり、それを起動させると、中から返しが飛び出し、それでがっちりと固定するのだ。


 そもそも杭が壁にすんなり刺さるわけがないのだが、そこはクラウンだから、と


「もう一度確認する。依頼内容はハーケン侯爵の息子、ゲイルの誘拐だ。気取られるなよ。」

「了解。配置に付く。」


 屋敷の裏口をピッキングし、中に入っていくクラウン。

 どうやら誰もいないようだ。


(全員寝てるのか?)


 相手は貴族、しかも大層な富豪らしい。だから使用人が大量にいるはず。


(それが全員?無防備すぎるな。いや、それとも...)


「相棒、生活音がしている場所はあるか?」

『いや、ないな...いやまて、訓練された暗殺者の足音だ。屋敷に8人くらいだ』

「大層な自信だな」

『あぁ、そうだな』


 今の会話の通り、クラウンが視覚に優れているのに対し、相棒は聴覚に優れている。

 だから、お互いに助け合い、信頼しあう事ができるのだ。


(警戒するに越したことはないな。)


 背負っていたリュックから、光学迷彩を取り出し、着用する。


 そこからはもうすんなりと、ゲイルの部屋までたどり着くことができた。

 どうやら彼も眠っているらしい。


 念には念を、と、リュックから、麻酔針を取り出し、首筋に刺した。


 そしてそのままゲイルを担ぎ上げ、窓をあけ飛び降りた。


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