七月十日

海斗瞬

七月十日

 リィィイイン、リィイン…。

 風鈴の音が聴こえた。窓を閉めきった病室の窓に吊るした風鈴が風もないのに揺れている。

 視線だけ窓側へやると、雨が降るのか、灰色の空が続いていた。室内もどこか薄暗い。

 すると、どこかで嗅いだ臭いがした。

 私にとって夏の思い出の一部になっていた臭い。

 火葬場の独特な臭いだ。

 そう、ガソリンと、肉や脂肪が焼けた後の骨と灰の臭い。


 視線を天井へ戻すと、見知った人たちがそこにいた。

 ああ、次は私なんだとぼんやりと考えた。

 葬式があるのは決まって夏の始まりだった。祖父も祖母も、両親も、夏に逝った。


 そんな今日は、七月十日。

 私はそっと、目を閉じた。

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七月十日 海斗瞬 @kujiragumo

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