帰ろう。

 一緒に帰りませんか。


 消え入るような声で言われた。彼は顔を伏せてしまったいるが、きっとその顔は真っ赤だろう。付き合って2ヶ月は経つというのに、初めと変わらないその態度に愛しさを覚えた。


 私は両耳にしていたイヤホンを外した。曲は一切流していなかった。きっと彼が来るだろう、と思っていたから。



 彼を見て、私は言う。


「いいよ」


 パッとあげたその顔に跳ねる心臓がうるさい。

 それをひた隠しにして、なるべくいつものように振る舞う。


「じゃあ行こ」


 口数が少なくなることと、愛嬌のある笑顔ひとつも見せられない自分が嫌になる。


「うん!」


 寒い空気の中、彼の隣を歩くだけで、やけに心臓がうるさかった。


 防寒具を全て脱ぎ捨てたいほど暑かった。


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