はちみつれもん。

 帰りにコンビニによりたいと彼女が言ったので、凍える空気の中歩いて行った。俺は特に買うものもなく、少し物色するだけだった。彼女がお待たせと言って、一緒に外に出た。

「ん。これ持って」

 彼女からペットボトルを渡された。250ミリのそれは温かいホットレモンだった。彼女はごそごそとビニール袋の中を漁り、飴の袋を出して開けた。

「なにそれ」

「はちみつれもん味」

 そしてそれをひとつとりだして自分の口に放り込んだ。

「私は今、口に飴があるのでそれを飲めなくなった」

「……まぁそうだね」

「そのあったかい飲み物はすぐに冷めてしまう」

「……? じゃあ舐めながら飲めばいいんじゃない?」

「ちーがーうー。味混ざるでしょー。……だから、君が先に飲んで」

 あぁ、そういうことか。

「わかった」

 半分笑いながら、温かいペットボトルを開けて、一口飲んだ。体に染み渡るような甘酸っぱさを噛みしめる。

 そして、彼女と向かい合った。

「? なに?」

「いいからちょっと」


 どうしようもなく愛しくなったんだ。


 唇はほのかにレモンの香りがした。

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