第8話どこへ行っていた

 これも入院していた時の話。

 前にも記したとおり、私が入院していた病棟は南向きの、窓の広い四人部屋でした。

 私と、隣のベッドの人は病気も同じだし、入院期間も長かったので、まあ、仲が良かったわけです。

 ある朝のこと。

 その人がこんな事を言うんですよ。

「きみ、夜中に不思議な寝言言ってたよ」

「え。寝言?」

「そう。ファイナルファンタジーみたいな、不思議な言葉で何か叫んでた」

「えええ?」

 全く心当たりがありません。

 まあ、寝言ですからね。

 しかし、ファイナルファンタジーみたいな不思議な言葉って何でしょう。

 私はこのゲームが好きで、Xまではクリアしています。

 人気のシリーズだから、プレイした事のある人は多いと思います。

 で、思い出してほしいんですよ。

 当たり前だけど、あのゲームは日本語で(販売された国の主要な言語で)発売されています。

 固有名詞も、特に奇をてらったものはありません。

 ですよね?

 ……じゃあ、ファイナルファンタジーみたいな不思議な言葉って、なんだ?

 おそらく、となりの人は、聞いた事もないような、ファンタジイっぽい不思議な言葉と言いたかったんだろうな、と思うんです。

 今時は、格別勉強した事がなくても、テレビなどから色々な言語が流れますから、主要な言語ならなんとな~く、フランス語っぽいとか、スペイン語っぽいって言うんじゃないでしょうか。

 でもきっと、そういう言葉にはあたらなかったんでしょうね。

 重ねて。

 私にはなんの心当たりもありません。

 夢も見なかった。

 ……私はどこへ行っていたんだ?

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