第7話ひらひらする手

 以前私が営業本部社員であった会社が持っていた、居酒屋チェーンのアルバイトに聞いた話です。

 今は他社に売却されてしまったそのチェーンには、幾つか、本部クラスのお店というのがありました。

 そのひとつが銀座N××ビルにあったお店です。

 私はこの店のポスレジのメンテを担当していたので、わりとここの社員やアルバイトと近い関係でした。

 この店のアルバイト数人が言うには……。

 飲食店ですから、お店で働く人は制服に着替えます。

 着替えるための、狭いスタッフルームがあります。

 そして、居酒屋ですから、営業時間は夜、なわけですね。

 出勤してこのスタッフルームに入ると、当然暗いですから電灯をつけなくてはなりません。

 その前は……そう、暗いですね。当然です。

 すると、並ぶロッカーのあちこちから無数の白い手が出てきてひらひら動くのです。

ロッカーや壁、天井、床からも。

 電灯をつけると消えるそうですが、さすがにこれを聞いた後、そのスタッフルームに入るのは気味が悪かったですね。

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