まず触る。とにかく触ってくる。そして触られたがる。更に彼女の大人びたところはすっかり影を潜め、わがままを言ったり怖くなるほど喜んだり、なんと表現していいかわからない声を上げたりすねたりと、若干不安を覚えるほどに行動が幼くなってしまった。

 また、彼女の精神状態が不安定だった原因が取り除かれた以上、僕がいなくても勉強に集中できるだろうと思い、家庭教師のアルバイトを辞退しようとしたのだが、

『真奈が、先生が家庭教師を続けてくれるのなら真面目にテストを受ける、と言っておりまして……お給料も増やしますから、どうかこのまま続けていただけませんか。お願いします』

 と串矢さんに頭を下げられてしまい、とても辞められなくなってしまった。今の僕の仕事は言ってしまえば毎週決められた日時に真奈さんとお茶を飲んだり、お菓子を食べながら雑談することだ。それで一般のアルバイトの何倍もの給料をもらっているのだから、はっきり言って精神衛生上よくない。

(……仕事に見合わない給料をもらってしまってる以上、せめて真奈さんのわがままにできる限りつきあってやる気を維持してもらわないと)

 幸いクリスマスには大学も休みになっているし、特別な用事があるわけでもない。真奈さんのことだから本当にテストで全教科九〇点以上取ってしまうだろうし、クリスマスのお泊りデートとやらが実現することを想定して行動していかなければならない。

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