26
「お前、お前えええええええええええええええええ、何をしいいいいいい、違う。違う違う違う違う違う違うう、俺は、俺は違う、俺は、俺は人間じゃねえ、俺は人間なんかじゃねえ、女なんかじゃねえ、俺は、俺は笹岩楓なんて名前じゃねえええええええええええええええええ」
それを聞いて、僕は自分の力を、そして僕がトカゲに何をしたのかを理解した。
(――そうか。僕はこのトカゲを、無理矢理僕に作り変えているのか)
「嫌だああ、嫌だああああ、許せ、許して、許してください、俺は、俺は、僕になりたくないんです、僕になんかなりたくない! 僕になんかなりたくないいいい! 僕は俺のままで! 僕は、僕は、僕はあああああああああああああああ!! あーあああああ、ああああ、あー、ああああああ、あ」
――絶叫が終わる。着実に僕へと近づいていたトカゲの体は変化に耐えられなかったのか、ある地点を境に急速に実体を薄れさせ、やがて何も存在していなかったかのように消え去った。
生き延びられたという安堵から、その場に膝をつきたくなるが、僕にはまだやらなければならないことがあった。
まだ何が起こったのかわからず放心している真奈さんに歩み寄る。そして片膝をつき、彼女を抱き締めた。
「――もう大丈夫だよ。今まで辛かったね、真奈さん」
梓にしてもらったように真奈さんの頭を撫でる。頭を撫で始めてから少しして、腕の中から、大きな大きな泣き声が聞こえてきた。
その泣き声が終わるまで、僕はずっと、少女の苦しみで張り詰めた、風のような感触の黒髪を撫で続けた。
四 照魔の鏡 終了
※次回の更新は10月を予定しています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます