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「……本当は、信じてなかったんだ」
「なにぃ?」
「僕がお前達を、お前達みたいな、人間を自分の思うままに踏み躙る化け物をどうにかできるなんて、本当はこれっぽっちも信じてなかったんだよ」
「あー、そうかぁ、お前、怖すぎて、おかしくなっちまったんだろぉ」
「でも、それでも僕は――お前達と同じことがしたかった」
「あぁ? なんだってぇ?」
自分の内側から、正体のわからない何かが溢れ出る。それはトカゲに向かって伸ばされた僕の右腕から滴り落ちて、落ちた一滴一滴が繋がり、伸び、広がり、天に向かって遡り、そうして僕の視界全てを埋め尽くす、巨大な鏡面となった。
鏡面には僕自身も含めた、僕の背後の景色が全て映っている――はずだった。しかし、そこには唯一にして絶対の誤りがあった。
「僕は」
鏡面に映っていたのは僕ではなく、トカゲだった。それは決定的な誤りだった。映るのは、僕でなければならない。どうしようもなく無力で、自分も他人も守れない、
「僕は」
自分の内側に山と積もった、泥混じりの雪のように薄汚い欲望にただつき動かされるだけの、
「僕は、お前達を」
どうしようもなく愚かで醜い、この世で一番大嫌いな、僕自身でなければならない!!
「僕達がされてきたように、グチャグチャに、踏み躙ってやりたかったんだ!!」
僕が叫ぶと同時に鏡面は崩れ、消えた。そして、
「ぐうううええええええああああああああああああああああああああああああああああ」
僕の目の前で、トカゲの体は何か一つの形を目指して、グネグネと捻じ曲がっていった。
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