第7話 トリックを考えて
なぜかある時期の間、花子の噂は突然プツリと途絶えてしまった。
儀式を行っても花子は現れず。悩みを持った生徒もないがしろに。
花子がついに成仏したんだ。いや、彼はラスベガスに旅行にいったんだ。いやいや、沖縄だろ。そうじゃないよシンガポールだよ。
といった噂が飛び交う中、誰かが花子の正体を探ったからというマジっぽいレスも出てきた。
しかし、花子のお悩み相談室は再び開設することとなる。
「花子くん。花子くん。私の悩みを聞いて欲しいの。みんなのいうとおり本当に消えてしまったの?」
「はい。復活しましたー」
「やったー」
実に軽い感じの復活であった。
「それであなたの悩みはなんですか」
「あのね。花子くんに物語を考えてほしいの」
「いいよ。報酬は君の処女ね」
「だめよ」
「じゃあ僕の貞操をあげる」
「そういうの犬も食わないからいらないわ」
「僕の貞操はオークションで高値がつくかもしれないのに」
「私ねミステリー小説を書いてるの」
「エロシーンある?」
「シャワー」
「その程度の濡れ場じゃ客はつかねえよ」
「いいえ。ミステリー小説で大事なのはトリックよ」
「そだね」
「文芸部の部員達がある山荘に合宿するの。そこで殺人事件が引き起こされるのよ。死んだのはみんなから憎まれている一人の女子部員」
「なんでみんなから憎まれてるの?」
「文化会の男を例外なくくったからよ」
「とんでもないヤリマン設定」
「それでその女が死ぬんだけどトリックが思いつかないの」
「いやまって、何も考えてないじゃん」
「私BLしか書けないもの」
「シフトチェンジしすぎじゃない?」
「まず完全犯罪ってどうすればいいのかしら」
「うーん。警察の介入はよくないよ」
「そうなの?」
「そりゃまあ。今の警察は探偵いらずだし。だから嵐の日を選ぶのはもちろん。電線は全部切らないといけないし、嵐が明けたあとは山荘を燃やさないと・・・・・・あ、そこまでしたら犯人が勝っちゃうか」
「で、凶器は何にするべきかしら?やっぱり刃物?」
「うーん。刃物ってさ。はっきりいって不意打ちとかしないとすんなり殺せなくない?そりゃまあ相手は女性だし抵抗はそこまで強くないと思うけど、叫ばれたりすると思うし」
「撲殺かしら?昏倒させればいいんじゃない?」
「あー。犯人が男なら可能かも」
「じゃあ女性なら難しいわよね」
「そうだね。じゃあ毒殺とかできれば」
「そもそも毒をどうやって用意するのよ」
「そこは犯人がんばってよ・・・・・・そもそもこういうのってトリックから考えるべきじゃないかな」
「そのトリックが思いつかないから言ってるのよ」
「・・・・・・・・・密室トリック、アリバイトリック・・・・・・あ!閃いた!」
「え、教えて?」
「うわ。ほんと凄いよ。イマラチオさせてくれる?」
「それはないけど、教えて?」
「まずターゲットの女を昏倒させます」
「うん」
「それからどっか部屋に押し込みます。できたら物置かな。それを外側からガチガチに施錠します。あ、その時に中で何か音楽を大音量で流すこと」
「どうして?」
「あとでわかるよ。あ、電気のブレーカーも落として犯行時間も夜じゃないとだめ」
「ほうほう」
「ターゲットの女を押しこんでるところは大音量だから人が集まってくる。扉は南京錠でガチガチに施錠されてるから開かない。当然中の女も慌てだす。でもその女もだんだん静かになるんだ」
「え?どういうこと?」
「犯人が昏倒している時に飲ませた毒がきいてきたのさ」
「死因は毒殺なのね」
「そして扉が開く。頃合いをみて施錠してある南京錠の鍵が見つかったとかなんとかいって開けるんだ。そして犯人は真っ先に駆けこまないといけない」
「え?どうして?」
「犯人は暗闇の中で、隠してあったナイフを刺すのさ。毒で死んだ女の死体にね」
「だから、どうしてなのよ」
「そりゃアリバイを作るためだよ。大音量の音楽がかかっていて、しかも暗闇の中じゃあ死体は発見できてもナイフを刺すのは簡単さ。ましてや相手は既に死人。そうすることで明かりをつけたあとにみんなどう思う?犯人が刺す瞬間を見てないんだ。みんな刺殺だと思うはずさ。自分たちが南京錠を解除してるあいだに全く知らない誰かがどこかから入って女を刺し殺したんだって思うはずだよ。これがトリック。警察が介入してこないとまずばれないだろうね」
そうして一つの完全犯罪が出来上がる。しかし、花子の話を元にした物語が世に出ることはなかった。
代わりに事件が一つおこった。
山奥の山荘で火事が起こったのだ。山荘の焼け跡から女性の刺殺死体が発見され、その事件を機に真田学園の文芸部は一時の間、合宿中に起きた悲劇という題でメディアによって悲しく報道された。
「ありがとう花子くん。あなたのおかげで誰にもばれずにすんだわ」
「じゃあイマラチオさせて」
「チンコ噛みちぎっていい?」
「あ、じゃあしなくていいでーす」
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