第6話 深まる謎

菅原の手には携帯があった。

 しかも1枚の重大な写真がおさめられている。

 「俺の生い立ちの感想を聞かせてくれないか?」

 彼は無駄に長い生い立ちを話している間に準備をしていた。

 トイレの個室通しは、下は塞がっていても上はそうではない。個室通しでトイレットペーパーの投げ合いもできればナプキンの投げ合いもできる。

 菅原は自撮り棒の先に携帯を取りつけて撮影していた。しかもシャッター音で撮影の瞬間を悟られないために旧校舎に入るその時から動画で撮影を開始していたのだ。

 「どうした花子。焦っているのか?そうだお前の今の心境を聞かせてくれ。それをインタビューでまとめてやる。ああ。やはり俺の予想は正しかった。幽霊など信じ難い。お前は生きている人間だ」

 その動画には一人の男子生徒が写っている。

 「そういうことされると困るんだ。みんな旧校舎にいる幽霊が相談にのってくれるっていう、そんな都市伝説みたいな話だからこそここにきてくれる」

 「おいおい。それはつまり自分が人間だと認めたものだぞ」

 「僕は幽霊じゃないとだめなんだ。・・・・・・んー。僕が幽霊というよりも・・・・・・花子は幽霊でないといけないでしょ?」

 「は?何言ってるんだお前。とにかく今からそっちに行くからな」

 その瞬間、なぜか菅原のいる個室の扉がノックされた。

 予想外の出来事でビクリと彼は肩を跳ねさせる。

 なんだ・・・・・・あいつからこの個室に来ようというわけか?

 もしかすると携帯のデータを消去しに襲ってくるかもしれない。

 恐る恐ると扉に手を伸ばす菅原。だがその向こうには予想外の人物が立っていた。

 「おい。下校時間はとっくに過ぎてるぞ」

 担任の教師が見回りに来たらしい。慌てて菅原は3番目の個室を確認する。

 しかしそこには誰もいない。

 「おい、菅原。新聞部の部長はやはり悩み事が多そうだな」

 「はい?」

 「誰もいないトイレで独り言をずっと言っていたじゃないか」

 「俺が・・・・・・独り言を?」

 「ああ。自分で下げた評判は自分で上げるとかなんとか、言っていただろ」

 「こっちの個室に男子生徒がもう一人いたはずだ」

 「いたら注意している。それと・・・・・・」

 担任は菅原の携帯をパッと取る。

 「携帯の所持は禁止になっただろ。生徒会長のルールに生徒は従うもんだ」

 「あの女は教師の肩しか持たないだろ。それのどこが生徒の会長だ」

 菅原は特に携帯をとられても焦りはしなかった。

 既にトイレの個室の中から、家のパソコンへと動画を送信済みだったからだ。

 しかし、彼は驚愕することになる。家のパソコンをいくら見ても送られたはずの動画がなかったのだ。そしてこんなメールが届いてた。

 『これ以上探るようなら、お前をスカトロパーティーに招待してやる』

 特に怯むような脅迫ではなかった。

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