第4話 新聞部部長 菅原拓磨
真田学園の中で新聞部部長の菅原拓磨は特に有名だった。
元々は屋上庭園のレポートを紙に記して毎朝校門に配るというひっそりとした人物だったが、前生徒会長のスキャンダルを告発したことで一躍有名となったのだ。
『麻薬の密売!?生徒会長の闇を暴露!』
という記事を出して、実際にマリファナの売買をガリ勉ども相手に売りつけていた生徒会長を失脚させたのだ。
学園が多額の金を使ったためにその事件は公で明らかになることはなく、2chにスレが立つし噂は飛び交っているはずなのになぜかニュースでは1度も取り上げられないという非常に不気味なことになった。
ともあれ菅原は有名になり、彼自身奥手な性格でなければ、所構わず寄ってくる女を孕ませることも可能だったというのに。
「あんまり目立ちすぎるなよ」と前新聞部部長の兄には釘をさされたが、本人にその気はなく。新たなゴシップを探していた菅原。
そんな彼が次に目をつけたのが、旧校舎の花子くんだった。
「俺の質問を聞いてほしい」
「はい。なんですか」
儀式を適当にすっとばしたが、なぜか花子は現れた。
ポルノグラフィティを歌っていたというのにメリッサのサビで急にハモり出したのだ。
「悩みというのは少し複雑で、語るには俺の過去を話さなくてはいけない」
「まとめてね」
それから小一時間菅原は自分の生い立ちについて語り出した。それははっきり言って悩みには全く関係ない。しかし、心の内を明かすのだからまずは相手に家庭環境を知ってもらい、そうすることで自分と同じ立場に立ってもらうと言って、全てを語った。
「そして、この前の誕生日では兄にダーツスタンドを買って貰った」
「うん」
「嬉しかったから手紙を返した」
「いいね」
「家族でケーキをたべた。ホールはありきたりだから、父がロールケーキを買ってきたが、それもはっきり言ってありきたりだと思った」
「お父さんにそう思うのはよくないと思うよ」
「新聞部に裏切り者がいる」
「生い立ち語る意味やっぱないじゃん」
なんでも菅原が言うには、新聞部に彼自身のことを詐欺師だと妬む者がいるそうだ。
「俺の許可なく。勝手にある記事を印刷したやつがいる。そいつは夜中に印刷室に忍びこんで、印刷した新聞を翌朝屋上から投げ放った」
「豪快だね」
「記事には俺が詐欺師だと記されていた」
「それまたなんて?」
「お前。前の生徒会長が麻薬を売っていたことは知ってるか?」
「あー。はいはい。その生徒会長から相談されたことあるよ」
「なんていっていた?」
「俺は無実だ、って」
「そうだ。俺があいつのロッカーに麻薬をぶちこんだ」
「え、そうなの。僕、彼に罪を認めましょうっていったんだけど」
「そうか。だから奴はいまだに反省室登校を続けているのか」
「あちゃー」
「ガリ勉どもに息抜きとして使え、と麻薬を売りつけていたのは当時の副会長だ。麻薬もマリファナなんてそんないいやつじゃない。ペップとかいう不純物だらけの粗悪品だ」
「へえ。なんか興味ある」
「ペップはザラメみたいな見た目だ。そいつを女が運ぶ。ピアスに付着させてな。もちろんバレた時のための保険だ。コップに水をは
ってそこにピアスを落とすといい感じに薬物が水に広がる。その水に厚紙を浸してタバコみたいに巻いたあと、先っちょを炙って吸うんだよ」
「ははあ」
「会長は副会長を疑っていた。だから逆に抹殺されたんだよ。俺の手でな」
「なんで君が?」
「副会長にそれなりの対価をもらったんだよ。まあ話の論点はそこじゃない。俺は裏切り者が誰か知りたいんだ」
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