第7話 あたらしいまちにうかれよう!
第7-1話 温泉と土下座
継ぎの街――【ネルベラ】。
王都【アルキエスタ】から北へ最近にあり、ネルベラの森と呼ばれる広い森と、高い城塞で街が囲われている街だ。ナナシ林道を抜け、森を突っ切った先にあり、普通ならば冒険初心者でも一日足らずでたどり着ける場所である。
……と、門番さんが教えてくれた。
だが、期待の星の俺たち【勇者】一行は日がとっぷり暮れた頃に入場し、現在は城門近くの案内所でぐったりしていた。
「……まあ、色々あった割には早めに着いたよね」
「チッ……色々ありすぎだ。馬鹿め……」
クロイツェルの毒舌にもキレがない。
これはこれでちょっと寂しいのはなんでだろう。
カウンターに突っ伏していると、前からちょいちょいと肩を突かれた。
あごひげをたくわえた壮年のおじさん案内人の、人の良い笑顔。
「【勇者】様方、お疲れのようでしたらまずは温泉などいかがでしょう?」
……おんせん?
俺が呆けていると、残りのメンバーは勢い良く顔を上げ、目を爛々と輝かせる。
「フン、そういえばこの街には温泉があったな。いいじゃないか」
「にゃにゃっ。絶対行くにゃ!」
「温泉なんて久しぶり! 行こうよ【勇者】様!」
「んっ? う、うん」
温泉ってなんですか、とは聞けない雰囲気だ。
クロイツェルとキャミーとコーロの三人が揃って好きということは有名な料理屋さんだったりするのだろうか。それは俺も是非行きたい。
考えていたら、お腹が減ってきた。
でも、ツィータは他の店で皆が食事をするのは大丈夫なのだろうか。
ちらりと表情を覗き見ると、目が合ってしまった。
「なによ。私も行くわよ」
「……そっか! よかった! みんなで行こう!」
「はあ!? 何それ! 気持ち悪い!」
「ええ……?」
気持ち悪いって、何か変なことを言っただろうか。
凹んでいると、後ろから「ふふふ」とサファイアさんの笑い声がした。
「エリオット君もオトコノコなのね。私とも一緒に入りたいの?」
「え? それはもちろんそうだけど?」
「ひえっ??」
入りたい……ってお店にだよね。
魔族だから遠慮してるのかな。だとしたら後押ししておかないと。
「サファイアさんがいないと物足りないよ!」
「へえっ??」
サファイアさんが、らしくなく頬を真っ赤に染め上げている。
魔族のことを知っているのは俺だけだから、俺が気を使わないと。
周りを見渡すと、案内人のおじさんも含めて皆形容しがたい表情をしていた。
キャミーとツィータは顔を真っ赤にしてぷるぷる震えている。
二人とも両腕をクロスさせ、胸を隠しているようにも見えるが何故だろう。
「【勇者】様はサイテーにゃ!!」
「【勇者】は死んだほうが良いわ」
「なんで!?」
……一分前の俺に言いたい。なんでじゃないよ。
俺は誠心誠意、生まれて初めての土下座をした。
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