第4-3話 おはようとごめんよ
……と、いう夢を見た、のだろうか。
「う、うーん……」
「あ! 【勇者】様が起きたよ!」
「あああ! エリオットくん、本当にごめんなさい! 目を覚まさなかったらどうしようかと思ったわ! よかった、よかった……!」
「フン。あれしきで気を失うなど、軟弱にも程がある……」
「私の魔法はそんなにヤワな威力じゃないわ!」
「チッ、それなら仲間の安全にくらい気を遣えヘッポコ魔女が……!」
「うっ……そうね。その通りだわ。本当にごめんなさいエリオットくん……」
「ほら【勇者】様。薬草茶を作ってみたんだ。しびれに効くはずだから飲んでみて。あと、【アルキエスタ】で【勇者】様が買ったポーションもあるから飲んでね」
「え? え? あ、ありがとう……?」
俺はどうやら気絶していたらしい。
言われるがまま、コーロが作ってくれたという薬草茶を飲むために体を起こそうとしたが、味わったことのない感覚がして起き上がれなかった。
断じてサファイアさんの膝枕だったから起きるのをやめたわけじゃない。
しびれているふりって、どんな感じですればいいのだろうか。
邪なことを考えていると、似合わない涙を浮かべたサファイアさんが、手ずから薬草茶を飲ませてくれた。苦いけれど、身体が軽くなっていく気がする。多少はしびれていたのだろう。
申し訳なくなってサファイアさんから視線を逸らすと、心配そうに座ってこっちを見ているコーロが見え、奥にはいつものように大剣を背負ったクロイツェルが見えた。
そして、自分は浅い洞窟の中に居るのであろうことがわかった。
「何があったんだ……? それにキャミーとツィータは?」
「ああ、記憶まで飛んでいるのね……」とサファイアさんが申し訳なさそうに話し始めた物語は、俺が夢だと思っていた内容と一致していた。そして、キャミーとツィータは俺のために体力のつく食材を探しに出てくれているのだという。
それを聞いているうちに、キャミーとツィータも洞窟に入ってきた。キャミーの両手には美味しそうな丸々猪のおみやげ付きだ。
やっぱり、いい仲間だな、と思う。
俺は名残惜しさに打ち勝って、体を起こした。
「ありがとう、みんな」
コーロとキャミーとサファイアさんは笑う。クロイツェルとツィータはそっぽを向く。
「それにしても驚いたわ、エリオット君。私の《テスラボルト》を受けてものの五分で起きるだなんて」
俺は「そうかな」と照れつつ、五分で猪を狩ってきたり、薬を調合したり、膝枕をしてくれたりする仲間たちのことを頼もしく思った。
しかし、これは困った。
サファイアさんの《テスラボルト》のせいで気絶したわけじゃないと、言い出せる雰囲気じゃなくなってしまった。
ごめんよ、サファイアさん。
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