その名はシェイクスピア
ウィリアム・シェイクスピア(英語: William Shakespeare, 1564年4月26日(洗礼日) - 1616年4月23日(グレゴリオ暦5月3日))は、イングランドの劇作家、詩人であり、イギリス・ルネサンス演劇を代表する人物でもある。卓越した人間観察眼からなる内面の心理描写により、最も優れた英文学の作家とも言われている。また彼ののこした膨大な著作は、初期近代英語の実態を知る上での貴重な言語学的資料ともなっている――
言わずと知れた超有名な世界的作家、シェイクスピア。
四大悲劇と呼ばれるハムレット、オセロー、リア王、マクベスや、ロミオとジュリエットなどを作り上げた人物であり、2002年に行われた「100名の最も偉大な英国人」投票では第5位で、アイザック・ニュートンをも上回る結果となっている。一人の作家がこれだけの影響力を持つというのは、前代未聞の話と言える。
『無限の猿定理』の説明にも引き合いに出されているように――ともかく、シェイクスピアの文章は世界中の人々に認められ、後世に語り継がれた代物であることが分かる。
小説家にとっては、これ以上はないとも言える神の領域――何とかして、その足掛かりを作ることは出来ないだろうか?
現在あるのは、全83 種類から、ランダムに1文字のカタカナを出力するE〇CELファイル。これを「シェイクスピアのなる木」に変える為には、まず、出力される文字を多くしなければならないだろう――流石に1文字では名文は出来まい。『世界で一番短い手紙』も出てしまった後だし……
数分間考えた末、とりあえず、「シェイクスピア」の7文字を出すことを目標に、E〇CELファイルを直すことにした。
C1セルが猿の思考部分であるので、これを7列に――つまり、C列からI 列まで引き伸ばした。D1には「vlookup」による変換部分が定義されているので、J列に退避した上で作業を行った。その後、J列からP列までを変換部分の領域とした。
C列のrand関数の値は、J列で変換する。D列の値は K列が、E列の値はL列が……という具合にすれば、無作為なカタカナを7文字分出力することが出来る。
さて、その結果は……
『グリアモヅゾセ』
シェイクスピアに掠りもしていない。
だが、そんなことは分かり切っている。最初の1文字が合う確率すら 83分の1なのだから、初回で「シェイクスピア」と出てきたら、一生分の運を使い果たしたと言っても過言ではない。
それでも、何度かチャレンジすれば、一文字くらいは合うはずだ。
幸いなことに、rand関数はE〇CELの操作をする度に、自動で新しい乱数を出力するようになっている。列の幅を調節したり、適当なセルに文字を入れて消すを繰り返すだけでも、乱数は入れ替わり、新たなカタカナが生成されるのだ。
結果は以下の通りとなった。
『メオメポツォブ』
『ゾャュネカリポ』
『ポプピピプボモ』
『ユヨンジプキデ』
『ゴネネダミヂイ』
『ヒユホニママヨ』
『ミラヘグテケゼ』
『アギセヂボヴノ』
『ヅジチピミムマ』
『ヘボフゴドギパ』
『ゴポヤナワモノ』
分かってはいた。分かってはいたのだ。
以前書いたかもしれないが、文字列が出てくる総パターン数は、文字の種類を文字数で累乗したものになる。つまり、「シェイクスピア」の文字列が出る確率は83の7乗分の1――つまり、約27兆分の1である。
不眠不休で1秒に1回ずつ、セルの幅を調節したとしても、27兆回行うのに約86万年かかる。86万年前と言うと、まだ北京原人すら誕生しなかった時代である。どんなに生物学が進歩しても、ここ60年の間に、寿命を86万年にすることは厳しい話だろう――更に言えば、約ではしょった部分が478年あるので、大半の人間の人生は、端数の始まりの部分で終わりを迎えることになる。
このまま猿のようにセルの幅を調整し続けていたら――いずれ、会社をクビになり、路頭に迷い、金がなくなり、マンションを追い出され、実家にこもり、金を食いつぶし、家族から絶縁され、住む場所がなくなり、食うあてもなくなり、やせ衰え、後悔のまま死ぬことになるのだ。
これがシェイクスピア――世界に挑もうとする凡人に立ちはだかる、絶望的な壁の名である。
(お詫び)
rand関数の仕様について、「列の幅を調節したり、適当なセルに文字を入れて消すを繰り返すだけでも、乱数は入れ替わる」と記述していましたが、E〇CELでは、列の幅調整だけでは、乱数は再生成されないことが判明しました。
(実験当時に私が使っていた表計算ソフト「K〇ngsoft Spreadsheet」では、動作が確認出来ていました。どうも、ソフト間で関数の仕様に違いがあるようです)
小説内の操作を再現したい方がいましたら、大変恐縮ですが「セル幅の調整」の部分を「セルへの文字入力/削除」と読み替えてください。
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