第4話 初陣

ずっと薄暗いところにいたせいか少し青空が眩しい

城の中は薄暗かったのに外は割と明るいようだった


「どこに向かってるんだ?」


「近くの廃村です。そこでなら存分に動くことができます」


「能力の説明をしてくれるって話じゃなかったのか?」


「その説明をするには体を動かしながらの方がわかりやすいかと」


そうゆうものなのか

少し腑に落ちないような気持ちもあるがここは彼女に従おう

道中他愛ない会話を交わしながらも廃村にたどり着いたようだ


「着いたことですし、能力の説明を」


よし、それを待っていた


「先ほども述べました通り 一人一つ能力が与えられます」


「俺はだったな」


「ええ、そうです。なのでこれを」


シオンが俺に剣を手渡してきた

まぁ剣士なら剣士として行動すべきなのだろうが……


「随分とシンプルな剣だな」


異世界に夢をみすぎていたのだろうか

もう少し煌びやかな剣を渡されるのかと心のどこかで期待してたのかもしれない


「外見はシンプルですが強度は折紙付です。その剣は持ち主の力量に合わせて進化していく特殊な剣で、大変貴重なものです」


「そんなに貴重なものなのか?」


「その剣を持ったものは片手で数えるほどもいません。王の直属騎士でも滅多に与えられないものなんですよ?」


また大層なものを渡されたな……

だがありがたく受け取ろう

最初から妙な能力のある武器よりかは幾分マシだろう


「で、戦っていれば俺に合わせてこの剣も進化する。ってことでいいのか?」


「そのようなところです」


「ならここに呼び出した理由は戦え、ということだな?」


「その通り。あなたはまずその力の使い方を知らなくてはなりません。なので訓練として私の召喚する魔物を倒してもらいます」


魔物狩り……ゲームみたいな展開になってきたな


「では始めます……出でよ『ロノヴェ』」


ロノヴェ?聞いたことのない名前だ……

少なくとも俺の知ってるような魔物ではないのだろうか

だとしても初戦に強い魔物と戦わせるほどシオンも鬼では……


「な…!」


建物を突き破り棍棒を持った巨大な魔物が姿を見せる

その姿は醜く巨人というよりかはトロールのようだった

俺も割と身長は高い方だがそれでも膝までしか届かない


「どう考えても初戦の相手じゃないだろ!これは!」


いつの間にか遠くに離れていたシオンに呼びかける

…完全に傍観を決め込む気だ


「安心してくださーい!魔力量は抑えてまーす!なのでそこまで強くはないはずです!」


そこまで強くは無いとは言っても楽には勝てる相手には見えない

というかあんな巨人に楽に勝てるなら修行なんてやらなくてもいいだろう

そんな事を考えているうちに棍棒が振り下ろされる


「…!なんて衝撃だよ……!当たったらひとたまりもないぞ」


いままでどこか油断していたのかもしれない

これは剣道のような『スポーツ』ではないのだ

人と人との競争と同じレベルで考えていては……死ぬ


「また、振り下ろしか!」


それに当たれば一撃で死ねる

それを予感させるようなパワーと衝撃であった

だがいままでの俺とは違うんだ!


(体が軽い…!これなら!)


巨人の棍棒は何もないところを通り過ぎた

今の俺ならあれなら回避できる!


(確かにあいつはでかくて強い…だがそれだけだ!)


巨人の攻撃が遅く見える

おそらくはあいつが疲労してきたからではない

俺の身体能力が上がっているのだ


(当たらなければどうってことない!)


そう思ったその時、振り下ろすことしかしなかったあいつが薙ぎ払ってきた


(あれはかわせない…!)


その時体が勝手に動いたような気がした

流せている…!あの重い攻撃を流すことができたのだ!


「これなら……いける!」


ひたすらに振り下ろし、薙ぎはらうそんな攻撃が続いた

剣の扱いはわかってきたとはいえあいつを倒さないことには終われない


(どうにかしてあいつにダメージを与えなければ…!)


重い振り下ろしが飛んでくる

だが今の自分ならあれさえも受け流すことができる

今確かに俺は、この剣は成長してるのだ!


(よし!あいつが体勢を崩した…!)


好機!切り掛かるなら体勢を崩した今しかない!


「ぐっ…!硬い……」


普通に真正面から攻撃してもダメージは入らないようだ

ならどうする…?頭を使うんだ……

倒すためには致命傷を与えなければならない

だが俺の身長ではあんな高さ攻撃できない

なら足元を狙い続けるか?

いや、それでもいつか蹴りが飛んでくるだろう


「自分が届かないなら……相手を倒すだけだ!」


その巨人が足に攻撃してきたことにやっと気づいたのかゆっくりと足元を見る


「っ!」


俺がいたはずの場所に蹴りが飛んでくる

俺の読みは正しかったようだ


(前の世界よりも体が軽い!思った以上に体が動く!)


少し前まで気のせいかもしれないと思っていたものが確信じみて我が身に帰ってくる

少し距離をとって今後の動きを考える


(あいつ…辺りを見渡してるのか)


あいつは俺を見失ったのか辺りを捜しているようだ

やるなら今しかない…!


「今だっ……!」


俺はあいつの背後に回り…足の腱を切り裂いた!

正面からだと強固な骨が深い傷を防いだようだが腱ならば……!


「よし、やった!」


目論見通りあいつはもう立つことすらままならないようだ

トドメを刺してやる…!

そう思ったその時

見覚えのある制服が目に付いた

動揺で攻撃の手が少し緩む


「さがって!敵です!」


シオンが背後から叫ぶ

今まで余裕を見せていたシオンが少し焦った様子を見せた

俺は今いた場所よりさがって様子を見ていた

おそらくあいつらもシオンの言う敵なのだろう

あの二人をここで見ることになろうとは

あいつらは――『海斗』それに『瑞希』

この奇妙な運命と闘いの高揚感に俺は……


思わずを浮かべていた

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黒白の騎士 シャルル @ryuten99

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