第21回『数学バカ子の塾通い』

ミヤタスさんの通勤経路はバスと自転車でルートが異なる。

本当ならまだどうにかこうにか自転車で通えてたはずなのに、近年稀に見るクリスマス前の怒涛の積雪でバス通勤を余儀なくされていてとても悲しい今日この頃です。

何故って、丁度いいバスがないから30分早く起きて乗らないといけないからだよ!

北海道の冬の朝30分前行動はマジ苦行です……さむい……布団から出たくない……。

電気代節約で極力自室の暖房は使わない方針なので、たまに腕とか足出して寝てると朝びっくりするほど冷たくなっててビビるよね!!



それはさておき、だ。通勤経路の話に戻ろう。

自転車通勤のルートだと、家から出てすぐのところに学習塾があってさ。

その二階建ての小ぢんまりとした佇まいを見るたびに、いつもその塾に通っていた頃のことを思い出すんだよね。

私がそこに通ったのは、中3の夏休み明けから受験までの半年くらいでしかないんだけど、人生で最初で最後の塾通いだったからすごく印象に残ってる。



高校受験ってほら、内申点というものがあるじゃん。

非常にシンプルな理由なんだけどさ、それが芳しくなかったのよ。

何せ国語さんとは中3の段階で結婚を約束するくらいの仲だったし、英語さんとも比較的友好な関係を築けてはいたんだけど、数学さんとはもう奴が算数と呼ばれていた時点から一切目も合わないし、連絡先を交換する見通しさえ立たない状態だったからさ。(我ながらだいぶシュールな例えやな)

中学入学時から中3の1学期終了時点で5段階評価で2から全く動く気配はなく、数学欄では白鳥が優雅に首を下に向けてるのが常で、さすがにこりゃやべーなってなったんだよ。

エッセイ第9回あたりで書いたけど、理科の先生ともバトって内申点辛口だしね……。

そんなわけで、自宅からいちばん近かった塾に通い始めたのが夏の終わりくらい。

東進とか錬成会みたいなチェーンではなく、少人数(とはいえ20人くらいはいただろうか)で講師の先生にみっちり教えてもらえるところだったから、通うこと自体は苦ではなかった。

ただ数学は苦しかった。何がって、なんかもう私が自分で引くほど馬鹿すぎて申し訳なかった。


「どこが分からないの?」

「ここです……」

「じゃあ、まずこっちがこうなってるのは分かる?」

「分かんないです……」

「そっか。じゃあこれがこうなるのは?」

「分かんないです……」

「えーと、じゃあここのあたりは分かるよね?」

「分かんないです……」


という会話を更に何周かして、そっと先生にテキストを中1用に差し替えられた時のやるせなさよ。

受験科目徹底コースで、中3の秋に中1からやり直すというこの馬鹿さ加減、内心やべー奴が来たなオイって思ってたと思う。

そもそも本来は算数の時点の、分数で足したり引いたりしだしたあたりから置いてけぼりだったから実質小3くらいで止まっている。

だけど決して優しさを捨てることなく、最後までにこやかに教えてくれてた先生のプロフェッショナルぶりには今でも感謝しています。

勉強しながらすぐ隣のガソリンスタンドの有線でL'Arcの新曲(当時はLOVE FLIESだったね。あれのギターのkenちゃんのサビのバックコーラス最高なんだよ)がかかるたびにテンションを抑えきれず、首で縦ノリしながらテキストと向き合っていた不真面目極まりない生徒だったけど、おかげさまで第一志望に無事受かったのは本当ありがたかった。

ちなみに2学期の内申は担任が数学の先生だったので、テストは散々だけど授業態度が極めて真面目だったという情けをかけてもらって初めて3になったからワンランク上で受験できた。



あと塾の思い出といえば、最後の追い込みの冬期講習。

多分志望校別にクラス組まれてたから私のコマの前後にも授業あって、前の人が机に書いたラクガキがいくつかそのまんま残ってたりしてさ。

その中に『L'Arcの曲で何が好き?』ってメッセージが書いてあったの。

座る席はランダムだったから当然私あてではないんだけど、それが中1からガチラルヲタとして生きてきた私の席にあった。

運命かよ!!

って一気に盛り上がって、その日メッセージのすぐ下に『虹とLies and Truth!!』って書き足しておいた。

そしたら次の日、更に『虹いいよね 好き』って下に足されてるわけ。

それから、ほんっっっと楽しかったんだあ。

新曲いいよね、なんて言いながら毎日机でL'Arcの話をして。

あの席に誰が座るんだろう?って教室入れ替えの時に帰らないで廊下の窓からこっそり見守ったりしてた。

そもそもその日に返事が書かれてるかも分かんないわけだから、私の席に座ったあのスラッとした重めの髪型の男の子が机文通の相手なのかは迷宮入りだったんだけどね。

机に書かれたたくさんのメッセージも、1週間したらまっさらに消されてて泣きそうだった。

確かにだんだん私と彼(推測だけど字から察するに男の子っぽいなと思う)のメッセージは机の内側に侵食していってたけど、なかなか割り切れない気持ちだったね……。

あれがいつか大人に見つかって消されてしまう可能性を全く考えてなかったあたり、浮かれすぎてはいたんだ。

でもそういう楽しみがあったから、冬休み返上の塾通いも乗り越えられたんだと思う。

おかげさまで最終的には第一志望の普通科98%、別の私立校の特進クラスでも94%の合格率というお墨付きを頂けた万全の体制で受験に臨み、無事第一志望に合格できました、というお話でした。



今は小学生のうちから塾通いしてる子も珍しくないけど、半年しか通ってない私ですら大変だったから、そんな小さいうちから学校以外でも勉強しなきゃいけないの本当に大変だろうなぁ。

と、根っからの勉強嫌いとしてはついつい思っちゃう。

お相手は私、雅タスクでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る