第20回『名前で引っかかったら負け』
何年か前、友達と年末に札幌に出かけた時のこと。
真駒内で行われていた全日本フィギュア遠征していた友達に1日遅れで合流して、翌日の当日券ワンチャン……!
と目論んだものの玉砕で、だったら有馬記念でドリーム掴もうぜ!!
と奮闘したものの玉砕で、でも何だかんだノープラン札幌散策も楽しかったなあ、という良き思い出。
その時のホテルがね、すすきのだったの。
歓楽街として割と全国的にも有名な。
札幌駅近辺じゃないからか値段もお手頃で、1階のお食事処も結構夜遅くまでやってるいいホテルだったんだけど、立地が大きい通りのちょい奥で。
行ったことないとこだったから、もう1本奥の道に迷い込んでしまって。
そしたらもう、あたり一面衝撃の光景が広がっていたよね。
もうね、すごかった!
アリス・イン・ワンダーランドならぬミヤタス・イン・アンダーグラウンド。
黒と赤とゴールドが主張する熟女愛好家専門の高級ソープランドを筆頭に、ナース、JK、秘書などなどあらゆる性癖が全面に押し出されたパンチの効いた風俗店が軒を連ねる、そこはまさに未知の世界。
中でも印象に残ったお店の名前があって、その名もズバリ『激安ファッションヘルスし〇むら』。
あれは……セーフなのか?はたまたアウトなのか?
看板の字体も色も完全にあの有名なファッションセンターだけど、これはガチであちらサイドに訴えられたら負けるやつでは……?
などと、未だに思い出しては疑問に思っている。
ちなみにお店の名前は忘れちゃったんだけど、目に痛いピンクの文字で『言葉責めM性感』と掲げられた看板も忘れられない。
言葉責め。M。性感。
すごくない?これ全部1個にまとめられてるよ?
言葉責めに性感するMが集うお店。
……なんかさ、こう言っちゃなんだけどエロゲの二次元美少女をオカズに一人上手してるメンズの方がまだまっとうな性癖なんじゃないかという気がしてくる不思議。
あそこの常連さんはヲタクキモいとか言える立場ではないと思う。
言葉責めM性感、繁盛してるのだろうか……地味に知りたいよね。
あーあ、あの性癖博覧会みたいな通り、せっかくだから記念に写メでも撮ってくれば良かった。
翌朝もドラマでよく見る歌舞伎町の朝の風景みたいに、本物のホストさんやキャバ嬢さんみたいな人が香水と煙草とお酒の香りを漂わせつついっぱい歩いてる姿が見れて貴重な体験でした。
そうそう、グレーゾーンなファッションヘルスで思い出した。
似たような看板のお店が地元にあってさ。
ものすごい小ぢんまりした雑居ビル的なとこの2階で、バーだったと思う確か。
白背景に青で書かれた『SEED』の文字……ピンと来る人もいるかもだけど、完全にガンダムSEEDのトレースだった。
Sの字が大きいあのタイトルロゴそのまんま。
いいのか?これはアリなのか?って友達とそこ通るたびに話してた。
ある時通ったらいつの間にかなくなっていたんだけど、単に客が来なかったのかサンライズに消されたのか……謎です。
でも、きっとそうやって道行く人の注目を集められた時点でもう大成功なのかもしれないね。
どんなお店なのかな?内装は?って気になっちゃうもん、やっぱり。
そういう意味では、本のタイトルも似たようなものかな。
例えば平積みされてない、同じ色の背表紙が並ぶ本棚でいかに輝けるか。
これどんな本なんだろう?ってまず目を止めさせて、人差し指でそっと背表紙を引っかけさせる、それだけの力があるタイトルをいかに生み出すか。
あのね、ひと昔前のBL小説とかすごかったのよ。
何がって、タイトルのクセの強さが!笑
一気にBLというコンテンツが増え始めてた頃で、きっと作家さんも他と差別化するのに必死だったんだろうね。
そして誰もがそう思って、どんどんキャラの濃いタイトルが並ぶ混沌とした小説コーナーが爆誕していった……いや、あくまでミヤタスさんの想像なんだけどね?
今でも古本屋の100円コーナーに並ぶBL小説のタイトルのインパクト、まじ面白いからね。
笑いを狙っているのか?真面目なのか?突っ込んでいいのか?
という無限ループの葛藤に陥るからぜひ一度見てみて欲しい。
なお、今まで見た中で個人的に推したいのは『淫らな微熱のタクティクス』です。
どんな話なのかまるで見えてこないところと半端に混ざる英語に腹筋崩壊を禁じ得なかった。
だがしかし、気になって背表紙に人差し指を引っかけてしまったのは事実なので、あの日の私は淫らな微熱のタクティクスに完全に負けました。
なんなら思い出したついでに、今あらすじまで調べてしまいました。
海外ブランドのショップ店員のメンズふたりが賭けをして、契約の証として交わしたキスをきっかけに深みにハマっていくという話だそうです。
……いつかこのエッセイで淫らな微熱のタクティクス読んだ話してたら笑ってください。(フラグ)
お相手は私、雅タスクでした。
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