10.研修時代に習った事

「どこへ行けば良いんだろう……」


 外は限りなく知っている風景そのものの場所だった。立地も現実のそれと同一。であれば、まずは支部でも目指して歩いてみるとしよう。無いとは思うが、怪異撃退アイテムなんかがあるかもしれない。

 それに、完全に希望的観測ではあるが支部には除霊師達が集まる。ある程度、現実とリンクしていればそこからミソギ達の存在を誰かに読み取って貰えるかもしれない。


「どこに向かっているの?」


 結芽の言葉で我に返る。そうだった。彼女もいるんだった。


「今は支部――除霊師達が集まる、会社みたいな場所を目指しています。誰かが私達に気付いてくれるかもしれないし」

「そうなのね、流石はミソギさん。私よりずっとずっと頼りになるわ」

「いや、そんな事は……」


 ――何だか現実の私とは別の人でも見えてるのかな?

 繰り返すが、彼女とはただの知り合い否、知り合い未満の可能性もある。まるで昔から頼りになってしっかり者だったかのように絶賛されるのは少しばかり気味が悪い。自分を通して別の人物を見ている訳でも無さそうだし、謎は深まるばかりだ。


 ――いや、今はそれどころじゃない。怪異の攻略方法は怪異の中に。

 研修で一番初めに習った事を脳内で反芻。焦ってはいけない。今一緒にいるのはただの一般人だけで、自分自身がしっかりしなければ解決の糸口を見つける事は出来ないのだ。

 その為には探索が不可欠。一見すると誰も居ないがいつもの風景に見えるこの場所にも何か意味があるのかもしれない。


「結芽さん、探索をしようと思うからたくさん歩くと思う。大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫。あなたに任せるわ」

「そうですか。夢の中とはいえ、無理はしないで下さいね。現実に作用するかもしれないし……」

「心配してくれるの? あなたは本当に優しいのね。けれど、気にする必要は無いわ。さっきも言ったけれどあなたが行く所なら、どこへだって行くから」

「そ、そうですか。有り難うございます……?」


 やっぱりどことなく不気味だな、そう思いつつその感情に気付かないふりをし、探索を開始する。まずはどこへ向かおうか。


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