第9話 魔術素材と魔術武装、そして魔術品

 魔術特性センスによっては、魔術品と呼ばれる補助的な物品を扱うことがある。そうでなくとも、魔術品の精製に関しては汎用性が高く、たとえば記録媒体、結界の要、そうした利用方法がある。


 まず、宝石を代名詞とするのが、魔術素材と呼ばれるものだ。

 もちろん、どんな宝石でも良いわけではない。ただ一般的に流通しているほとんどの宝石において、ある程度の魔力適性がある。

 これは、魔力浸透性とも呼ばれる、いわゆる相性だ。しかし、最大級に良い、というわけではない――が、代名詞となっている理由は、実際に装飾品として現代において、市場によく出回っている代物だからである。

 目につきやすく、手に入れやすい。だから宝石という印象が強い。

 しかし魔術の世界においては、たとえばリーリット鉱石、ダグズ鋼など、魔力適正が高いものがいくらでもあり、それは用途によって変わってくる。

 どんな場所にあるか――これも、素材によって変わるが、未開の地には多い。選別方法は魔力を与えることや、特定の探査サーチ術式でも見つけることができる。

 また、特別な市場で入手もできるが、表立った商売ではないため、商店の発見が難しく、顧客になるのも条件がつく場合が多い。相場自体もかなり高く設定されており、かなりの資産を持っていないと、調達は困難だ。それだけ、発見が難しいものと捉えれば良い。

 だが、知っていると、ふとした切欠で見つけることがある。道に落ちていた小石や、伐採された木、割れた竹の中――。


 それら魔術素材を使って作るのが、魔術品、ないし魔術武装になる。


 魔術品とは、術式の影響を受けた物品の総称であり、その定義は多岐たきにわたる。

 日常的に使うのは〝蓄積ヘキサ〟という特性の一種で、魔力を溜め込むものだろう。人には魔力容量の限界値が定められており、それを越えて所持できず、溢れたものは外に出て自然界の魔力マナへと還元されてしまうので、それを魔術素材に溜めておく。

 これによって、術式を使用し過ぎた時も、ある程度は魔力を保持できる。ないし、宝石の魔力で術式を完成させることができる。

 しかし、素材によって蓄積できる魔力は上下する。特にダイヤモンドでサイズの大きいものに顕著なのだが、空白ブランクと呼ばれる、魔力適正ではなく、内部の空白、術式や魔力などを〝詰め込む〟ための場所が大きい素材は、非常に価値が高い。上手くやれば、どんな術式でも組み込むことが可能になるからだ。


 具体例になるかはわからないが、私の場合はある種の魔術構成を内部に仕込むことで、記憶媒体として利用することが多い。もちろん、電子ネットのよう、セキュリティや攻撃、防御なども考えて組み込むため、その解読の難しさから、ほかの魔術師の成長を助けるよう、解除するよう手渡すことも可能だ。

 実際に解除できれば、セキュリティの構築方法や、魔術における組み合わせなどを学習することもできる。

 また戦闘補助として使っていたイヤリングには、疑似人格を与えつつも、一つには無数の術式情報、片方には情報分析を担わせて、私の思考補助として使っていたこともある。おそらく魔術の中では難易度の高いことをやっていたし、魔術品としては私が持つこれしかないだろうが、可能であることは覚えておいて欲しい。


 そして魔術武装とは、魔術品と類似しながらも、それ自体が〝武装〟であることが条件となる。

 簡単なものでは、魔術素材を使って作った剣などが、そうだ。

 しかし、魔術素材〝だけ〟で作ったものの方が稀であり、一般的にはリーリット鉱石を一部混ぜ合わせ、親和性を高めるために深雪を溶かしたフルッカ溶液を加え――そして、金槌などで金属を叩き、形を作る。

 全ての作業において、術式を使わない場合も多く、逆に、全て術式でやってしまう魔術師も存在はする。もちろん上記工程の中には、叩く際にリーリット鉱石と合う術式などを組み込むことで、鋭利さを底上げしたり、炎を発生させたり、時には呪いを振りまくような剣を造ることができる。


 よって、魔術武装は武器や防具そのものに該当する場合がほとんどだ。一時的に、戦闘中だけ身を守る鎧などもその中に含まれ、あるいは、私が戦闘をする際に着る戦闘衣ドレスコートも、これに該当する。


 魔術品を作ろうと思うならばまず、自分の魔力を与えた鉱石などを使ってみるのが、最初の一歩としては最適だろう。特に式陣、ないし結界を張る場合には、支点が必要になる。いわゆる区切りのための境界線なのだが、四方などに魔力を与えた鉱石を置くと、非常に把握が楽になるし、結界の補助としては最適だ。

 魔術武装の場合は、刀工などの専門的な知識もある程度必要になるので、多少の熟練が必要になる。しかし、自分に合った武装を作れることは魅力的ではある。

 魔術師だとて、接近戦闘をすることが多いからだ。


 余談になるかもしれないが、魔術武装の最高峰に位置するのは、ExeEmillion――エグゼエミリオンの刻印が記された、五本の得物である。

 ただし、一本目は所在不明の状態が長く、五本目は特定の人物しか扱えない。

 二番目から四番目は、所持者を選ぶものの、扱うことができる――が、発見は難しいだろう。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る