第4話 魔術構成の仕組み
設計図を見ても、概要はわかるけれど詳しくはわからない――それが、専門家ではない人の意見としては、多いだろう。あるいは、まったく何が描かれているかがわからない場合だとてある。
それは、設計図そのものが〝専門的〟であるからだ。つまり魔術においても、専門的な設計図として、魔術構成がある。
どのような術式にも魔術構成は必要であり、魔術回路が不変であるからこそ、構成に手を加えて術式は発展する。
ここでは、構成を読むために必要な知識を紹介しよう。
まず、術式の研究に必須とされる
展開式とは、本来ならば目に見えることのない魔術構成を、術者がその内容を詳しく把握するため、目に見えるような形にすることを指す。これにより、感覚で掴んでいたものが、実際に設計図として把握することができる。
熟練すれば、展開式そのものに触れることで、構成を変化させることも可能になるが、最初は構成を読み、新しく組み立てることが多くなるだろう。
しかし、魔術回路を通して術式が完成する以上、展開式そのものも、個性があり、基本的には他人の展開式を見たところで、その内容を理解することは非常に困難だ。
角形の図面が複数重なり合ったもの、形として捉えにくいフラクタル図、あるいは無数の数字が並んでいるものもあり、自分のものだからといって、そう簡単に読めるものでもない。
その中において、ある共通した部分もある。展開された時の〝表現〟こそさまざまであるが、注意深く見れば必ず、どんな術式の展開式にも存在するものがあるのだ。
まず一つ目は、
これは数式で言うところの、加減乗除、あるいはイコールといった、数値と数値を繋ぐ部分に当たる。
左右の繋がりを担う部分であり、たとえば術式の補強、範囲設定などで使われることが多い。
続いては、
順序として、最初に行うものと捉えるとわかりやすいかもしれないが、左右ではなく上下を繋げる式となる。正解を出すための数式ではないが、そのために扱う補助数式のようなものと考えれば、少しはわかりやすいだろうか。
二つの箱を並べるのが連立式ならば、二つの箱を重ねて高くするのが複合式となる。
実際の術式では、違う効果を付属する際に利用されることが多い。典型的なのは剣に火の属性を付加する場合だが、もっと小さい部分で使われる。
そして
二つのものを混ぜ合わせて、一つの構成にする部分である。大きく考えれば、水に風を混ぜて温度を下げて氷を作る、などがある。程度の差はあるが、混合式の存在しない術式はない。
基本的にはこの三つを使い、構成を繋ぎ合わせ、あるいは混ぜ、術式として完成させることになる。そのため、展開式の中では、この三種を探し出し、一体何をどう連立し、複合し、混合しているのかを探るのが、最初の一歩となる。
ちなみに展開式を陣にしたものが、術陣となる。
では一つ、たとえを出そう。創造系の特性で、剣を造る場合における、魔術構成の一例だ。
まず、金属の構成を用意し、そこに火の構成を連立式で繋ぐ。そこに圧力を加える構成を複合させておき、それらすべてを形状をかたどった構成と混合させる。
――その通り。
現実では、金属を火で熱して、ハンマーで叩いて形を作るのが、鍛冶と呼ばれるものだ。その工程と同じものを、同じよう術式で再現しているだけ、である。
ただしこれは、概要であることを理解して欲しい。
仮に火の構成であったところで、この火をどうやって作るかは、多くの選択肢がある。火種に何を使うのか、火力とその維持にどんな方法を選び、それが金属の構成と相性が悪くては話にならない――つまり、火の構成の中にも、多くの式が存在するわけだ。
剣を造るための、火の構成。あるいは、この剣だからこの火の構成をと、そうして細かくいちいち構成を編む人種こそ、魔術師だと捉えて良いだろう。
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